ドラッグストアが薬学部以外の大学生を採る。総合職ルートの設計
ドラッグストアの新卒採用というと、まず薬学部の学生を思い浮かべる方が多いと思います。ただ、店舗を回しているのは薬剤師だけではありません。売場づくり、発注、シフト、数字の管理、OTC(一般用医薬品)の相談対応。こうした店舗運営を担う人材を、薬学部以外の四年制大学から新卒で採っているチェーンは少なくありません。
この総合職ルートは、薬学部の開拓とはほぼ別の仕事です。接触する大学も、動く時期も、学生に刺さる話も違います。同じ「新卒採用」という言葉でまとめて動かすと、どちらも中途半端になりやすい。ここでは、非薬学系の大学生を店舗運営・登録販売者候補として採るときの設計を、学校選びから求人票、入社後の見せ方まで順に整理します。
まず「誰を採るのか」を一行で決める
総合職ルートで採る相手は、資格を持っていない学生です。入社後に働きながら登録販売者試験の合格を目指し、売場と数字を覚えていくことになります。薬剤師採用との最大の違いはここで、入口の時点では専門性を問わない代わりに、入社後に何をどこまで育てるかを会社が約束する必要があります。
採用要件を考えるときは、「薬の知識がある学生」ではなく「店舗で人と数字を動かすことに興味がある学生」と置いたほうが、募集も選考も設計しやすくなります。登録販売者の受験要件や店舗管理者になるための従事期間の扱いは制度変更があり、都道府県によって試験日程も異なります。社内の説明資料に数字を書く場合は、年度ごとに最新の実施要領を必ず確認してください。
なお、薬剤師と登録販売者で採用の進め方がどう違うかという全体像は薬剤師と登録販売者、新卒採用の進め方はどう違うかで整理しています。本記事はそのうち、四年制大学の非薬学系を狙う場合に絞った内容です。
薬学部ルートと何が違うか
学校も時期も訴求も違う、という点を一度表に落としておくと、社内で混乱しにくくなります。
| 薬学部ルート(薬剤師) | 非薬学系ルート(総合職) | |
|---|---|---|
| 対象 | 6年制の薬学生 | 四年制大学の文系・理系学部 |
| 学内での扱い | 医療系・専門職の求人 | 小売・流通業界の求人 |
| 窓口 | キャリアセンター、研究室、学科事務 | キャリアセンターが中心 |
| 動く時期 | 学事(実務実習・卒業試験・国家試験)に強く縛られる | 一般的な新卒就活スケジュールに沿う |
| 競合 | 他の薬局・病院・製薬 | 他業界の総合職全般 |
| 主な訴求 | 配属、初年度に任される業務、指導体制 | キャリアの階段、資格取得支援、転勤や勤務地の実際 |
注目したいのは「競合」の行です。薬学部ルートでは同業他社と比べられますが、総合職ルートでは小売・外食・サービス・メーカー営業など、まったく別の業界と並べられます。薬局業界の中での自社の位置づけを説明しても、学生の比較軸には乗りません。
どの学部・どの大学に出すか
全学部に声をかけても手が回らないので、優先順位をつけます。目安になるのは次の3つです。
ひとつ目は、店舗からの通勤・配属圏にある大学かどうか。総合職は複数店舗を異動する前提になることが多いため、エリアで生活できるかが現実的な条件になります。
ふたつ目は、学部の性質です。経済・経営・商学系は小売や流通の求人に反応が出やすく、栄養・食品・生命科学系、健康・スポーツ系は商品知識や健康相談への関心から接点を持ちやすい学部です。心理・社会・教育系も接客や人の育成への関心から候補になります。学部名で絞り込むより、「売場と人に関わる仕事に関心が向きやすい学部」という見方で広めに置き、反応のあった学部を翌年以降に厚くしていくほうが現実的です。
みっつ目は、キャリアセンターの対応です。求人票を受け付けてくれるか、学内の業界別セミナーに枠があるか、掲示や学内求人システムへの掲載がどう運用されているか。ここは大学ごとに差があります。提出時期や様式については大学に求人票をいつ、どう出すか。受付時期と様式を外さないにまとめています。
学校リストは一度に増やさず、初年度は数校に絞って毎年訪問できる体制をつくるほうが、結果的に関係が残ります。
「小売・流通の求人」として読まれる前提で書く
キャリアセンターの求人検索では、自社は医療ではなく小売・サービス業の分類に入ることがほとんどです。学生は同じ分類の他社と並べて見ます。そのうえで、求人票や会社案内に入れておきたいのは次の項目です。
| 項目 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 職種名 | 「登録販売者候補」だけでは何の仕事か伝わらない。「店舗運営職(将来の店長候補/入社後に登録販売者資格を取得)」のように役割と資格をセットで示す |
| 1日の流れ | 開店準備から発注・売場・閉店までを時間で並べる。接客以外の仕事があることを伝える |
| 勤務時間・休日 | シフト制であること、早番遅番の時間帯、年間休日と有給の実態を数字で出す |
| 勤務地と異動 | 配属範囲、転居を伴う異動の有無、決定時期 |
| 資格取得支援 | 受験費用、学習時間の扱い、合格後の手当 |
| 3年後・5年後の姿 | 副店長、店長、エリア担当など役割の階段 |
このうち学生が最も気にするのは、勤務時間・休日と勤務地です。小売業に対して「休めない」「転勤が読めない」という前提を持って見ている学生がいるため、ここを曖昧にすると比較の段階で外れます。弱い部分があっても、運用の実際とセットで書いたほうが応募後のすれ違いが減ります。
キャリアセンターには、求人票とは別に学生へ渡せる1〜2枚の資料を置いておくと案内してもらいやすくなります。何を載せるかは大学キャリアセンターに渡す資料を作る。求人票と別に必要なものを参照してください。
資格取得と店舗勤務を同時に進める育成をどう見せるか
総合職ルートの学生にとって、入社後の不安は「仕事をしながら本当に資格が取れるのか」に集約されます。ここを精神論で返すと信用されません。
示したいのは、時間の確保の仕方です。試験は都道府県ごとに時期が異なるため、受験する試験をいつに置くか、その直前期にシフトをどう組むか、教材や講座の費用を誰が負担するか、不合格だった場合に翌年どう扱うか。この4点を社内で決めてから学生に話すと、説明の歯切れが変わります。
あわせて、資格を取るまでの期間に何を任せるのかも伝えます。資格がなくてもできる業務は多く、その期間に売場と数字を覚えてもらう設計にしておけば、「資格待ちで何もできない人」になりません。無資格から育てる場合の支援設計は資格なしの人を採って登録販売者に育てる。募集条件と支援の決め方で詳しく扱っています。
薬剤師採用と混同して説明しない
最後に、実務で最もつまずきやすい点です。説明会や面接で、薬剤師の話と総合職の話を混ぜると学生が離れます。
会社説明の冒頭で調剤部門の体制や薬剤師の人数、在宅の実績を長く話すと、非薬学系の学生は「自分が主役ではない会社だ」と受け取ります。逆に、総合職の説明の中で「将来は薬剤師と同じように」といった比較を持ち出すと、資格の差を意識させてしまいます。
分けるべきは次の3つです。説明会の回(薬学生向けと総合職向けで別日程にする)、資料(職種別に分ける)、面接官(可能なら総合職には店舗運営側の社員を立てる)。同じ会社の説明でも、相手が自分の5年後を想像できるかどうかで聞こえ方が変わります。
調剤併設型の場合、薬剤師がいることは強みとして語れます。ただし語り方は「薬剤師と連携してOTCの相談に応じられる」「専門職が近くにいる環境で商品知識が身につく」という、総合職側から見た利点に翻訳してから出します。
非薬学系の総合職ルートは、薬学部の開拓より競合が広い分、自社の仕事を言語化できているかがそのまま結果に出ます。どの大学に、いつ、何を持って行くか。入社後の資格取得と育成をどう約束するか。この設計は一度つくれば翌年以降も使えます。
Talencoでは、採用ターゲットの設定から年間スケジュール、学校まわりの計画、説明会と選考、入社後の初期定着までを伴走して支援しています。実務は自社で進めたい場合の伴走コンサルティングと、実務まで一貫して担うフルサポートの2つのプランをご用意しています。詳しくは支援プランをご覧ください。
まずは無料相談(約30分〜・オンライン)で、現在の採用状況と来年の計画をお聞かせください。薬剤師採用と総合職採用の配分も含めて、採用設計をご一緒します。