内定者が複数いる年の、入社前のつなぎ方
新卒薬剤師を2名、3名と採れた年は、それだけで前年より状況が良くなったように見えます。ところが入社前の数ヶ月を一人ずつ個別にフォローしていると、面談の回数だけが増えて、内定者同士は入社式で初めて顔を合わせることになります。同じ年に入る仲間がいるという事実は、うまく設計すれば辞退を減らし入社後の立ち上がりを助けますが、放っておけば何の効果も生みません。
一方で、内定者同士の関係が濃くなりすぎると、一人の辞退が他の人に伝わって連鎖することもあります。この記事では、複数名の内定者を抱えた年に、横のつながりをどこまで作り、会社がどの距離で関わるかを整理します。内定者フォロー全体の設計は新卒の内定辞退を防ぐ。内定から入社までのフォロー設計で扱っているので、ここでは複数名という条件に絞ります。
一人だけの年と、複数いる年の違い
内定者が1名だけの年は、会社が相談相手にも比較対象にもなるしかありません(この前提は新卒を1人だけ採る会社の受け入れで扱っています)。複数名いる年は、その役割の一部を内定者同士が担えます。
具体的には、国家試験の勉強の進み具合を言い合える相手、配属や初年度業務の不安を「自分だけじゃない」と確認できる相手、入社後に分からないことを聞ける同年次の相手です。入社後に効くのは3つ目で、同期がいる新人は分からないことを店舗の先輩に聞く前に同期に聞けるため、質問できずに黙り込む期間が短くなりやすくなります。
ただし、これは自然発生しません。内定者は互いの連絡先を知らず、同じ会社に入る他人という状態で数ヶ月を過ごします。会社が場を用意するしかありません。
顔合わせは何回、いつやるか
回数は多ければ良いというものではありません。薬学生は実務実習、卒業研究、卒業試験、国家試験と学事が詰まっており、呼び出しはそれ自体が負担になります。学事の流れは薬学生の新卒採用スケジュール。6年制の学事と採用活動の重ね方を参照してください(年度により日程は変わるため、最新の学事暦と国家試験の実施要領を確認してください)。
現実的には、内定から入社までの全体で3〜4回程度に収めると運用が続きやすくなります。
| 時期 | 内容 | 形式の目安 |
|---|---|---|
| 内定直後 | 内定者全員の顔合わせ(自己紹介と会社からの連絡事項) | オンライン60分程度 |
| 国家試験の数ヶ月前 | 短い近況確認。勉強の話は深追いしない | オンライン30分程度 |
| 国家試験直前期 | 会社からの集合はかけない。個別連絡も最小限 | — |
| 合格発表後〜入社前 | 対面での集合(店舗見学、入社前オリエンテーション) | 対面 |
国家試験直前の時期に集合をかけると、参加した本人にも、参加できなかった本人にも負荷が残ります。この期間は「何もしない」ことを決めておくほうが安全です。連絡を止める旨をあらかじめ内定者に伝えておくと、放置されたと受け取られにくくなります。
オンライン中心にする理由
顔合わせをオンライン中心にする理由は、移動時間と交通費の問題だけではありません。
内定者の居住地はばらけます。大学の所在地、実家、実習先の近くと、時期によっても変わります。対面に揃えようとすると日程が合わず、結果として「来られる人だけ」の集まりになります。一部の人だけが顔見知りになった状態は、来られなかった内定者の孤立を強めることがあります。
加えて、オンラインは1回あたりの負荷が軽いため、短時間で複数回を組みやすくなります。対面は回数を絞り、合格発表後の店舗見学や入社前オリエンテーションに集中させるのが現実的です。
グループ連絡手段は、作る前に運用を決める
内定者同士が連絡を取れる手段は必要ですが、勢いで作ると後で困ります。作る前に次の項目を決めてください。
| 決める項目 | 考え方 |
|---|---|
| 誰が管理者になるか | 採用担当を管理者に置く。個人のアカウント任せにしない |
| 会社側は何人入るか | 1〜2名にとどめる。役員や店長を全員入れると内定者が発言しなくなる |
| 何を流す場か | 日程連絡と事務連絡を主にする。雑談は内定者側に委ねる |
| 内定者が辞退した場合 | 会社側が速やかに退会処理をする運用にしておく |
| 入社後の扱い | 入社日をもって役割を終える、または社内の連絡手段へ移す |
とくに辞退時の扱いは、決めていないと気まずい状態が続きます。辞退の連絡を受けた時点で会社が退会処理を行い、残った内定者には「一人辞退があった」という事実だけを、理由や氏名の詳細に踏み込まずに伝える。伏せておくと、後から本人同士のやりとりで伝わり、会社が隠していたという印象のほうが強く残ることがあります。
なお、業務用の連絡手段を入社前に使わせる場合、内定者は労働者ではありません。参加を義務のように求めると実質的な拘束と受け取られる場合があるため、任意であることを明記してください。入社前に業務をしてもらうかどうかは内定者に入社前アルバイトをしてもらうか。可否の判断と条件の決め方で別に整理しています。
会社が入りすぎない距離感
内定者同士の関係づくりに会社が張り付くと、その場は「行事」になります。自己紹介の順番を決め、話す内容を指定し、感想を提出させると、内定者は会社向けの発言しかしなくなります。
やることは、場と最低限の進行を用意して、あとは引くことです。初回の顔合わせで会社が担うのは、参加者の紹介、日程の共有、会社側の窓口が誰かを明示することまで。そこから先の会話は内定者に任せます。会社が知らない会話が内定者同士で起きている状態は、健全な兆候として扱ってよいものです。
ただし引くことと、放置することは違います。個別面談は横のつながりとは別に維持してください。集団の場では言えない不安(配属、初年度に任される業務、国家試験に落ちた場合の扱いなど)は、個別の場でしか出てきません。
辞退の連鎖と、その予兆
関係が濃くなると、一人の辞退が他の内定者の再検討につながることがあります。「あの人が辞めるなら、この会社は選ばないほうがいいのか」という揺れ方です。これを完全に防ぐことはできませんが、予兆は拾えます。
見ておきたい兆候は次のようなものです。
- 個別面談の日程調整の返信が、以前より遅くなった
- 集団の場での発言が減り、事務連絡に反応だけ返すようになった
- 配属や条件について、確認の質問が急に具体的になった(他社と比べている場合がある)
- 「まだ考えています」に近い言い方が混ざり始めた
これらが出たら、集団の場ではなく個別で時間を取ります。聞くのは意思確認ではなく、迷いの中身です。条件なのか、配属なのか、他社との比較なのか、家族の意向なのかで打ち手が変わります。金額の上積み以外で応じる材料の整理は他社と迷っている候補者に、最後の一押しで何を出すかにまとめています。
もう一つ。辞退が出たとき、残った内定者への対応を担当者の判断に任せないでください。誰が、いつまでに、何を伝えるかを事前に決めておくと、対応が遅れて噂だけが先に回る事態を避けやすくなります。
入社後の立ち上がりまでを一続きで見る
入社前の横のつながりは、入社後の相談のしやすさに引き継がれます。せっかく作った関係を、入社後に配属で分断したまま放置すると、また一人ずつに戻ります。
入社から数ヶ月は、店舗が違っても同年次が集まる機会を残しておくと、到達度の差や指導のばらつきに気づきやすくなります。研修日を揃える、月1回の同年次面談を組む、といった形で構いません。最初の3ヶ月に何を決めておくかは入社3ヶ月で辞められる薬局。最初の90日にやることを決めておくで扱っています。
複数名を採れた年は、翌年以降の新卒採用を続けられるかどうかの分岐点にもなります。入社前のつなぎ方、面談の設計、入社後の受け入れをどう組むかは、採用人数と店舗体制によって変わります。
Talencoでは、採用戦略の設計から説明会・選考・内定フォロー・初期定着までを伴走で支援しています。実務は自社で持ちつつ設計と実行管理を任せる形、実務まで一貫して任せる形の2つから選べます(支援プラン)。まずは無料相談(約30分〜・オンライン)で、今年の内定者の状況をお聞きしながら採用設計をご一緒します。