薬学生の新卒採用スケジュール。6年制の学事と採用活動の重ね方
新卒採用を始めようとして、一般的な就活スケジュールの記事を読み、そのまま自社の年間計画に落とし込もうとした。けれど実際に大学へ連絡してみると「その時期は実習で学生が学内にいません」と言われる。説明会を組んだのに参加者が集まらない。薬学生の採用でよく起きることです。
薬学部の6年制は、他学部と学事の作りが違います。5年次の実務実習と6年次の卒業試験・薬剤師国家試験という二つの大きな山があり、学生が採用活動に時間を割ける期間はその谷間に限られます。この記事では、6年制の学事の流れと採用活動をどう重ねるかを整理します。なお、新卒採用そのものの立ち上げ手順は薬局・ドラッグストアが初めて新卒採用を始めるときの進め方で扱っているため、ここでは時間軸に絞ります。
6年制の学事は「二つの山」でできている
薬学部6年制の学生生活を採用側の視点で単純化すると、次のようになります。
1〜3年次は基礎教育の期間です。4年次には実務実習に出るための共用試験(CBT・OSCE)があり、これに合格することが実習参加の前提になります。5年次は病院と薬局での実務実習が中心で、学生は長期間、大学の外に出ています。6年次は卒業研究のまとめ、卒業試験、そして国家試験対策が続きます。
ここで採用側が押さえておきたいのは次の2点です。
- 5年次の実務実習期間中、学生を集めるイベントは成立しにくい。 実習は複数の期に分かれ、大学・地域・学生ごとに時期が異なります。全員が同時に空いている日を前提にした企画は組みにくくなります。
- 6年次の秋以降は、卒業試験と国家試験対策に集中する時期になります。この時期に選考や長時間の拘束を求めると、学生にとって大きな負担になります。
実務実習の実施時期(期の区切り)や国家試験の日程は、年度や大学によって変わります。計画を立てる前に、志望校の学事暦と厚生労働省が公表する国家試験の実施要領(最新のもの)を必ず確認してください。
学年別に、接点の持ち方を変える
薬学生との接点は、6年次だけで作るものではありません。学年ごとに目的を変えて設計すると無理がなくなります。
| 学年 | 学事の主な内容 | 採用側の目的 | 具体的な接点 |
|---|---|---|---|
| 1〜3年次 | 基礎教育・演習 | 名前を知ってもらう | 学内説明会への出展、低学年向け見学会、アルバイト受け入れ |
| 4年次 | 共用試験(CBT・OSCE) | 進路の選択肢に入る | 業界研究セミナー、短期のインターンシップ |
| 5年次 | 実務実習(病院・薬局) | 現場を体験してもらう | 実習受け入れ、実習後の面談・見学 |
| 6年次前半 | 卒業研究・就職活動 | 選考と意思決定 | 説明会、選考、内定 |
| 6年次後半 | 卒業試験・国家試験 | 関係を保つ | 負担の軽い内定者フォロー |
このうち中小の薬局・ドラッグストアにとって現実的に効きやすいのが、5年次の実務実習受け入れです。認定実務実習指導薬剤師の配置など受け入れには要件があり、大学との調整も必要ですが、学生が数週間にわたって自社の現場を見る機会は他に代えがたいものです。
ただし、実習は教育の場であり、採用選考の場ではありません。実習中に選考の話を持ち込むのは避け、実習が終わったあとに「改めて話を聞きたい人はどうぞ」と案内する形が無理のない進め方です。
年間スケジュールをどう引くか
6年次の学生に向けた採用活動を、月ごとに整理すると次のような流れになります。日程は年度によって動くため、目安として捉えてください。
| 時期 | 学生側の状況 | 採用側でやること |
|---|---|---|
| 5年次の冬〜6年次の春 | 実習が終わり、進路を考え始める | 説明会・見学会の設計、求人票と募集要項の準備、大学への挨拶 |
| 6年次 春〜初夏 | 就職活動が最も活発 | 説明会、選考、内定出し |
| 6年次 夏〜秋 | 卒業研究・卒業試験の準備 | 選考の継続、内定者フォローの開始 |
| 6年次 秋〜冬 | 国家試験対策が本格化 | 接触頻度を下げ、短時間の連絡に切り替える |
| 6年次 2〜3月 | 国家試験・合格発表 | 連絡は最小限。合格発表後に入社準備を再開 |
多くの学生が動きやすいのは6年次の春から初夏にかけてです。ここで説明会と選考を集中させ、秋以降は「関係を切らさない」ことに目的を切り替えるのが、学生の状況に沿った組み方です。
内定から入社までの期間が長くなるため、この間のフォロー設計は別のテーマとして重要になります。詳しくは新卒の内定辞退を防ぐ。内定から入社までのフォロー設計を参照してください。
国家試験と入社日をめぐって、先に決めておくこと
薬学生の新卒採用が他業種と大きく違うのは、入社前に国家試験という関門があることです。ここで事前に方針を決めていないと、2〜3月に現場が混乱します。
決めておきたいのは次の3点です。
第一に、国家試験に合格できなかった場合の扱いです。内定を取り消すのか、翌年の再受験を前提に雇用するのか、その場合の職種と待遇はどうするのか。募集の段階で書面に明記しておくと、双方の認識のずれを防ぎやすくなります。
第二に、免許登録から免許証が交付されるまでの期間の業務設計です。国家試験に合格しても、名簿への登録手続きと免許証の交付には一定の時間がかかります。入社直後に薬剤師として調剤業務に従事できない期間が生じることがあるため、その間の研修内容や配属をあらかじめ組んでおきます。
第三に、入社日と研修開始日の設定です。合格発表から入社までの日数は年度によって変わります。全体研修の日程を発表日に依存しない形にしておくと、毎年の組み直しが減ります。
登録販売者・高卒採用とは別の暦で動く
同じ店舗の採用でも、薬剤師(6年制)、登録販売者、高卒の採用はそれぞれ違うスケジュールで動きます。薬剤師の暦に他を合わせようとすると、どこかが必ず間に合わなくなります。
登録販売者との違いは薬剤師と登録販売者、新卒採用の進め方はどう違うか、高卒採用の解禁日や一人一社制といった行政ルールは高卒採用の「一人一社制」とは。初めての企業がつまずくルールを整理するで扱っています。複数の職種を同時に採る場合は、それぞれ別の年間表を作り、採用担当の稼働がどこで重なるかを先に見ておくと運用しやすくなります。
まとめ
薬学生の採用スケジュールは、6年制の学事に合わせて組むものです。実務実習で学生が現場に出ている時期、国家試験対策に集中する時期を避け、動ける時期に接点を集中させる。そのうえで、低学年からの認知づくりと実習受け入れを長い時間軸で積み上げていく。この二層構造で考えると計画が立てやすくなります。
日程は年度ごとに変わります。毎年、志望校の学事暦と国家試験の実施要領を確認したうえで、自社の年間表を更新してください。
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