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研究開発職は、新卒で採って育てる。同業中途に頼らない採用設計

研究開発職の欠員が出たとき、「同じ領域の経験者を中途で」と考えるのは自然な判断です。ただ実際に動き出すと、紹介会社に依頼しても該当者がほとんど出てこない、出てきても大手との条件競争になる、という状況に行き当たることが少なくありません。製剤、分析、品質管理、薬事、臨床開発といった職種は、そもそも経験者の絶対数が多くありません。その中で転職市場に出ている人となると、さらに限られます。

この記事では、研究開発職を「新卒で採って育てる」前提に置き換えたときに、何を採用要件にし、年間でいつ動き、入社後の何年間をどう設計するかを整理します。中途採用をやめるという話ではなく、中途に依存しない軸をもう一本つくる、という考え方です。

同業中途に頼ると、母集団は自社の外でほぼ決まってしまう

同業経験者の中途採用は、母集団の大きさを自社でコントロールできません。その時期にその領域の経験者が動いているかどうかという外部要因で決まるため、求人を出し続けても半年、一年と空席のままになることがあります。そして空席が長引くほど、残った担当者に業務が集中し、その人の離職リスクが上がります。

一方、新卒は毎年一定数が卒業します。薬学部には6年制の薬学科のほかに4年制の薬科学科があり、多くは大学院に進学します。研究開発職の採用では、この4年制・大学院のルートが主な供給源になります(学科構成や進路の傾向は大学によって違うため、志望先の大学の公開情報を確認してください)。このルートの基本的な考え方は薬学部4年制学科・大学院生は誰が採るのか。6年制と別ルートで考えるで整理しているので、あわせてご覧ください。

新卒を軸に置くと、採用の難易度は「経験者が市場にいるか」ではなく「自社が育てられるか」に変わります。 後者は自社で手を打てる問題です。

要件は「研究テーマの一致」で決めない

中小企業が研究開発職の新卒要件を書くとき、つい「製剤研究の経験がある学生」「分析化学の研究室出身者」と限定しがちです。しかし学生の研究テーマは配属された研究室で決まるもので、入社後の業務とそのまま一致することはほとんどありません。テーマで絞ると、母集団が一気に細り、かつ入社後に伸びる人を取りこぼします。

見るべきは、テーマそのものより「研究のやり方が身についているか」です。要件を必須・歓迎・不問に三分し、必須は絞り込みます。要件の絞り方の一般的な手順は薬剤師の採用要件を3つに絞る。「経験者希望」で止まっている会社へでも扱っています。

区分項目の例見極め方の例
必須実験計画を自分で組み、記録を残してきた経験ノートの付け方、条件を変えた理由の説明を聞く
必須うまくいかなかった実験を言語化できる「失敗した実験を一つ、原因の仮説まで」と依頼する
必須社外の人に内容を説明できる学会・ゼミでの発表経験と、専門外への説明を試す
歓迎関連する分析機器・手法の使用経験使ったことのある機器を具体名で挙げてもらう
歓迎英語の論文を読み慣れている直近で読んだ論文と、その要点を聞く
不問研究テーマと自社領域の一致入社後の配属で調整できる範囲と捉える
不問学会受賞歴・在籍大学指導環境の差が大きく、能力と直結しにくい

必須を3つ程度に抑えると、面接で見る論点も揃います。面接官が複数いる場合は、この表をそのまま共通シートにしておくと評価のばらつきが減ります。

動く時期は、6年制の薬学科とずらす

研究開発職を狙う4年制・大学院の学生は、6年制の薬学生と就職活動の時期が異なります。修士課程の学生は修士1年の年度後半から動き始めることが多く、6年制の学生が実務実習や国家試験に追われる時期とはずれます。採用スケジュールを一本にまとめると、どちらかが手薄になります。

年度ごとに就職・採用活動の時期の目安は変わるため、動き出す前に最新の情報を確認してください。そのうえで、年間の流れはおおむね次のように組みます。

  • 春(年度初め):研究室・学科への求人票提出と、受付時期の確認。大学ごとに様式も締切も違う
  • 夏:研究室単位の見学会やインターンシップ。実験室・分析機器を実際に見せる回にする
  • 秋〜冬:個別の面談と選考。修士の学生は研究の繁忙期があるため、日程は柔軟に
  • 年明け以降:内定者フォロー。修了研究・学位審査の期間は接点を薄くし、節目で連絡する

研究室とのつながりがない状態からの接点づくりは薬科大学の推薦・研究室ルートは中小でも使えるのかで扱っています。研究開発職の場合、キャリアセンターより研究室の教員経由のほうが話が進みやすいことが多く、初年度は推薦を前提にせず「研究室訪問と見学の受け入れ」から始めるのが現実的です。

入社後の段階を、採用を始める前に決めておく

新卒で採ると決めた時点で、入社後2〜3年の教育段階を紙にしておきます。これがないと、現場は「とりあえず手伝わせる」状態になり、本人は何年目に何ができれば標準なのかが分からないまま時間が過ぎます。研究開発職は成果が出るまでの時間が長く、進捗が見えにくい分、到達基準の言語化が効きます。

期間任せる範囲到達の目安
入社〜3ヶ月安全教育、記録のルール、基本操作の習得手順書どおりに作業し、記録を正しく残せる
3ヶ月〜1年先輩のテーマの一部を担当指示された条件での実験を一人で完了できる
1〜2年テーマの一部を主担当として設計条件設定の理由を説明し、結果を資料にできる
2〜3年小さなテーマを任せる、社外対応に同席進捗と課題を自分の言葉で報告できる

期間は業務内容によって変わります。重要なのは、段階を区切ること自体よりも、「次に何ができれば上の段階に進むのか」を本人と上司が同じ文面で共有していることです。半年に一度、この表を見ながら面談すると、本人の停滞にも早く気づけます。

あわせて、教える側の時間を業務として確保してください。研究開発の現場は少人数のことが多く、指導役が自分のテーマを抱えたまま新人を見ると、どちらも中途半端になります。週に何時間を指導に充てるかを決め、その分の業務量を減らす。これは採用を決めた段階で経営が引き取る判断です。

中途採用をやめる、という話ではない

新卒を軸にすると決めても、中途採用や人材紹介は引き続き有効なチャネルです。特に、薬事や品質保証のように法令対応の経験が重い領域は、経験者を一人迎えることで若手の育成環境そのものが整うことがあります。新卒と中途は、どちらかを選ぶものではなく、役割を分けて使うものです。

ただし、新卒と中途を同じ工数で同時に走らせると両方が中途半端になりやすいので、年度ごとにどちらを主にするかは決めておきます。考え方は新卒と中途を同時に進められない。限られた工数の配分をどう決めるかにまとめています。


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