新卒と中途を同時に進められない。限られた工数の配分をどう決めるか
新卒も中途もやらなければいけない、と分かってはいる。ところが実際には、求人媒体からの応募対応をしているうちに大学への連絡が止まり、説明会の準備を始めた月は中途の面接日程が後ろに倒れる。採用担当が1人か、店舗運営との兼務で0.3人分しか工数がない会社では、これはよくある状態です。
問題は熱量や能力ではなく、配分が決まっていないことにあります。新卒と中途は目的も時間軸も違うので、同じ月に同じ力で進めようとすると必ずどちらかが割を食います。ここでは、どちらを主・どちらを従に置くかの判断軸と、従にする側で何を残して何を捨てるか、そして年間のどの月にどちらへ寄せるかの決め方を整理します。
中途は「今の穴」、新卒は「2〜3年後の構成」
同じ採用活動でも、解決しようとしている問題が違います。
中途採用は、今いない1人を埋める活動です。退職や産休、出店が起点になり、成果は「何月に入社したか」で測られます。動き出しから入社までは数週間〜数ヶ月で、止めれば店舗のシフトに直接跳ね返ります。
新卒採用は、2〜3年後の人員構成をつくる活動です。薬学生の場合、接点を持ってから入社までに1年以上かかることが普通で、6年制の学事(実務実習、卒業試験、国家試験)に合わせて動ける時期が限られます。この前提は薬学生の新卒採用スケジュール。6年制の学事と採用活動の重ね方で詳しく触れているので、ここでは「今年止めても今年の売上は変わらないが、3年後の人員構成が空く」という点だけ押さえておきます。
つまり中途を止めると今が痛み、新卒を止めると数年後が痛む。どちらも必要ですが、痛みの発生時期が違うので、同時に全力を出す必要はありません。
主・従を決める3つの判断軸
どちらを主軸に置くかは、次の3点で判断すると決めやすくなります。
| 判断軸 | 中途を主にしたほうがよい状態 | 新卒を主にしたほうがよい状態 |
|---|---|---|
| 欠員の緊急度 | 現時点で欠員がある。半年以内に退職・産休・出店が確定している | 欠員はなく、シフトは回っている。退職予定も把握できていない |
| 管理薬剤師候補の不足 | 管理薬剤師が高齢化・1店舗1名で後任がいない。数年内に交代が必要 | 中堅層が育っており、数年後の若手層だけが薄い |
| 学校との関係の有無 | 大学・専門学校との接点がゼロで、今年から関係構築を始めても入社は3年後になる | すでに実務実習の受け入れや訪問実績があり、来年の接点に乗せられる |
3つのうち2つ以上が同じ側に寄ったら、その年はそちらを主軸にする。これが現実的な決め方です。
注意したいのは、管理薬剤師候補の不足を新卒で埋めようとするケースです。新卒薬剤師が管理薬剤師を担えるまでには年数がかかるため、数年内に交代が必要なら中途が先になります。この論点は管理薬剤師の後任を、辞めると言われる前に用意するで整理しています。
従にする側は、工程を1つだけ残す
配分で失敗しやすいのは、従にした側を「軽くやる」ことです。軽くやると、告知も面談も中途半端になり、結果だけでなく相手(学校・候補者)との関係も損ないます。従にするなら、工程を1つに絞って、それだけは毎月必ず実行する。この形のほうが残ります。
新卒を従にする場合に残す工程は、学校1〜2校との接点維持です。年に1回訪問して求人票を置き、担当者の異動を確認し、学内説明会の枠の取り方を聞いておく。それだけでも、主軸に切り替えた年の立ち上がりがまるで違います。反対に捨てるのは、合同説明会への出展、自社単独説明会の開催、インターンシップの新規設計です。これらは工数の塊なので、従の年には手を出さないと決めておきます。
中途を従にする場合に残す工程は、求人の常時掲載と、応募が来たときの初動です。掲載を切らさず、応募から24時間以内に返信して日程を出す。薬剤師の中途採用は初動の速さで決まりやすいため、募集を張り続けるだけでも拾える確率は残ります。捨てるのは、スカウトの定期送信、複数媒体の同時運用、紹介会社への月次フィードバックの細かい更新です。ただし紹介会社は「席を埋める」チャネルとして機能するため、依頼を止めるのではなく、依頼内容を1枚に固定して更新頻度を落とす形にします。
兼務体制でどこまで社内に残し、何を外に出すかという切り分けは採用担当が兼務の薬局で、採用業務を止めずに回す体制も参考になります。
年間のどの月に、どちらへ寄せるか
主従を決めたうえで、月ごとの重みを先に紙に置いておきます。下は「新卒を主・中途を従」に置いた場合の一例です。年度や媒体のスケジュールで前後するため、自社では最新の学事日程や媒体の掲載開始時期を確認して調整してください。
| 時期 | 主軸(新卒)でやること | 従(中途)で維持すること |
|---|---|---|
| 4〜6月 | 学校リストの見直し、訪問・資料差し替え、実習受け入れの準備 | 求人の掲載継続、応募初動のみ |
| 7〜9月 | インターン・見学の受け入れ、説明会の設計 | 掲載継続、紹介依頼の内容を1回更新 |
| 10〜12月 | 説明会・面談の実施、選考 | 掲載継続、応募初動のみ |
| 1〜3月 | 内定者フォロー、国家試験前は接触を抑える | 新卒の動きが落ちる時期に中途の面接を寄せる |
このカレンダーの要点は、新卒の山と中途の山を同じ月に置かないことです。新卒の選考が動く月は中途を掲載だけにし、新卒が国家試験期間で接触を控える時期に中途の面接を入れる。工数の総量を増やさずに、両方を細く生かす形になります。
主従は固定せず、年に1回見直す
主従は3年固定するものではありません。退職者が出て欠員が発生した年は中途を主に戻し、体制が安定したら新卒に寄せる。年度の切り替え前に、先ほどの3つの判断軸をもう一度当てて決め直します。
このとき、従にした側の工程を1つ残していたかどうかで差が出ます。学校との接点を細く維持していた会社は、主軸に切り替えた年から説明会に乗せられます。何も残していなかった会社は、また関係構築から始めることになります。
配分は正解を選ぶ作業ではなく、「捨てる工程を先に決める」作業です。判断軸のどこに自社が当てはまるか、従にする側で何を残すか、Talencoでは新卒・中途の両方を前提に年間の配分から設計をご一緒しています。支援の形は実務を貴社が担う伴走型と、実務まで一貫して対応する形の2つがあり、詳しくは支援プランをご覧ください。まずは無料相談(約30分〜・オンライン)で、今年どちらを主軸に置くべきかから整理してみてください。