今年の採用を振り返る。来年のために残しておく記録
新卒の内定が出揃い、中途の募集も一段落する時期になると、採用の仕事は一度静かになります。このタイミングで多くの会社が次にやるのは「来年の求人媒体をどうするか」の検討です。ところが、前の年に何が起きたかを誰も書き残していないため、また手探りで同じ判断をすることになります。
採用の情報は、担当者の頭の中にだけ残りがちです。「あの大学は反応が良かった」「あの紹介会社は紹介数が少なかった」といった感触は、半年経つと細部が曖昧になり、担当者が異動や退職をすればまるごと消えます。この記事では、年度の区切りに1時間だけ時間を取って残しておく記録を4点に絞り、翌年の担当者が変わっても読める形にする方法を整理します。
振り返りが残らないのは、やる気ではなく置き場所の問題
振り返りをしない会社が怠慢なわけではありません。採用が終わると現場の繁忙が戻ってくるうえ、「何を書けばいいか」が決まっていないため、着手のハードルが高いだけです。
逆に言えば、書く項目をあらかじめ決めてしまえば1時間で終わります。目指すのは分析レポートではなく、翌年に同じ判断をする人が読んで迷わない程度のメモです。完璧な集計より、空欄のない簡易な記録のほうが役に立つことが多いと考えてください。
残す4点
1. チャネル別の応募〜入社の数
求人媒体、自社サイト、ハローワーク、人材紹介、学校経由、社員紹介といったチャネルごとに、応募・面接・内定・入社の人数を並べます。費用が分かるものは併記します。
ここで効くのは「どのチャネルが多かったか」ではなく、どこで数が減ったかです。応募は多いのに面接に進まないチャネルと、応募は少ないが入社まで到達するチャネルでは、翌年の扱いが変わります。選考中の進捗をその都度記録していないと後から集計できないため、進行管理の仕組みを先に整えておくと楽になります(応募者を表で管理する。選考中の取りこぼしをなくす最小の仕組み)。
2. 辞退が起きた工程
辞退を「何人辞退した」でまとめると使えません。応募後の連絡が取れなくなった、面接後に音信不通になった、内定を出してから断られた、承諾後に入社日が延びた——どの工程で起きたかで打ち手がまったく違うためです。
工程ごとに件数と、分かっている範囲の理由を一行で書きます。理由が不明なら「不明」と書けば十分です。不明が多いこと自体が、翌年に確認の仕組みを足す根拠になります。
3. 内定者が最後に迷った論点
入社を決めた人・断った人の双方から、最後まで迷った点を記録します。配属店舗がいつ決まるか、初年度に任される業務、残業や当番の実態、給与の上がり方。この4つあたりは繰り返し出てくることが多い論点です。
これは面談の記憶が新しいうちにしか書けません。日付と、本人の言葉に近い形で残します。翌年の説明会資料や面接での回答準備が、ここから直接つくれます。
4. 学校・紹介会社への対応履歴
誰に、いつ、何を渡し、どう返ってきたか。大学のキャリアセンターの担当者名、求人票を出した時期、学内説明会の可否、高校の進路指導部とのやり取り、紹介会社ごとの紹介件数と面談設定数。
学校関係は担当者の異動があるため、会社側に履歴が残っていないと毎年ゼロからの関係づくりになります。渡した資料の内容ごと保存しておくと引き継ぎが早くなります(大学キャリアセンターに渡す資料を作る。求人票と別に必要なもの)。紹介会社についても、依頼時に何を伝えたかを残しておくと翌年の擦り合わせが短く済みます。
1時間の使い方
| 時間 | やること | 成果物 |
|---|---|---|
| 最初の20分 | チャネル別に応募〜入社の人数と費用を表に入れる | 数の表1枚 |
| 次の15分 | 辞退を工程別に分け、分かる理由を一行ずつ添える | 辞退一覧 |
| 次の15分 | 内定者・辞退者が迷った論点を箇条書きにする | 論点リスト |
| 最後の10分 | 学校・紹介会社とのやり取りを時系列で書き出す | 対応履歴 |
数値が揃わない項目は「記録なし」と書いて先に進みます。空欄を埋めることより、来年の自分に渡すことを優先します。
担当が変わっても読めるようにする
記録はファイル1つにまとめ、採用担当以外もアクセスできる場所に置きます。紙のメモや個人のメール受信箱に残すと、担当交代の時点で消えます。
フォーマットは次の5列を基本にすると、新卒・中途のどちらにも使えます。
| 列 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| 年度 | どの年の記録か | 2026年度 |
| 区分 | 新卒/中途/パート/高卒など | 中途・薬剤師 |
| 項目 | 4点のどれか | 辞退(内定後) |
| 事実 | 起きたことを数と日付で | 2名。うち1名は他社と比較、1名は通勤時間 |
| 翌年への申し送り | 次の担当が読んで分かる一行 | 配属店舗の候補を二次面接で提示する |
評価や感想(「反応が悪かった」など)は、できるだけ事実の列に数や日付を添えて書きます。感想だけが残ると、翌年の担当者が判断できません。
来年変えるのは1つだけ
振り返りの最後に、来年変えることを1つだけ決めます。複数を同時に変えると、翌年に何が効いたのか分からなくなり、記録の意味が薄れるためです。
選び方の目安は、「数が最も大きく減っていた工程」から1つ取ることです。応募は来るのに面接に進まないなら一次接触の設計、面接までは進むのに内定が出ないなら要件と評価、内定後に崩れるならフォローと条件提示、というように対象が絞れます。母集団そのものが足りていない場合は、翌年の人数設計から引き直すことになります(新卒採用の数値逆算。目標入社数から母集団を設計する方法)。
決めた1つは、翌年度のカレンダーに「いつ着手するか」まで書き込みます。変更点を決めただけで実行時期を決めないと、繁忙期に埋もれやすくなります。
記録は、来年の採用設計の材料になる
採用が属人的になるのは、人が替わるからではなく、判断の材料が残らないからです。1年分の記録が1枚あれば、翌年の媒体選定も学校まわりの計画も、感触ではなく事実から組み立てられます。
Talencoでは、新卒・中途の両方について、過去の採用経緯の整理から年間スケジュールの設計、説明会・選考・内定フォロー・初期定着までを伴走して支援しています。実務は自社で持ちながら設計と実行管理を任せる形と、実務まで一貫してお引き受けする形の2つがあり、内容は人数・期間・体制に応じてお見積りします。詳しくは支援プランをご覧ください。
今年の記録をどう残すか、そこから来年の何を変えるか。無料相談(約30分〜・オンライン)で、採用設計をご一緒します。