新卒採用の数値逆算。目標入社数から母集団を設計する方法
「来年は新卒を2人採りたい」。ここまでは決まっているのに、では説明会に何人来てもらえばいいのか、エントリーは何件必要なのか、そのために何校まわればいいのかが決まっていない。採用が始まってから「思ったより人が集まらない」と気づき、慌てて媒体を追加する——薬局・ドラッグストアの新卒採用でよく起きる流れです。
原因は熱意でも予算でもなく、目標入社数から手前の工程を数字で結んでいないことにあります。この記事では、入社目標から内定・選考・説明会・エントリーへと遡って母集団を設計する考え方を、架空の数値例を使って整理します。新卒採用そのものの始め方は薬局・ドラッグストアが初めて新卒採用を始めるときの進め方で扱っているため、ここでは数字の組み立てに絞ります。
採用は「入社」から遡って考える
採用活動は時系列では「集める→選ぶ→決める」と進みますが、計画を立てるときは逆向きに考えます。ゴールは応募数でも説明会動員数でもなく、入社日にその人が現場に立っていることだからです。
逆算するときは、次の順番で一つずつ手前に戻します。
| 順番 | 工程 | 一つ手前に戻すときの問い |
|---|---|---|
| 1 | 入社 | 内定者のうち、実際に入社するのは何割か |
| 2 | 内定 | 最終選考に進んだうち、内定を出すのは何割か |
| 3 | 選考(面接・筆記) | 選考に進むのは、説明会参加者の何割か |
| 4 | 説明会・見学 | エントリーのうち、説明会に来るのは何割か |
| 5 | エントリー | 接点を持った学生のうち、エントリーするのは何割か |
| 6 | 接点(媒体・学校・実習・紹介) | 各チャネルで何人と接点を持つか |
この6段を数字で埋めると、「何をどれだけやるか」が具体的な行動量に変わります。
架空の数値例で組み立てる
以下は考え方を示すための架空の例です。実際の歩留まりは企業規模、地域、職種、時期によって大きく変わるため、この数字をそのまま自社の目標に使わないでください。
薬剤師の新卒2名を目標とした場合の一例です。
| 工程 | 必要数(例) | 次工程への通過率(例) |
|---|---|---|
| 入社 | 2名 | — |
| 内定承諾 | 2名 | 内定→承諾 50% |
| 内定出し | 4名 | 最終→内定 50% |
| 面接(一次〜最終) | 8名 | 説明会→選考 40% |
| 説明会・職場見学 | 20名 | エントリー→参加 50% |
| エントリー | 40名 | — |
この例では、2名を採るためにエントリー40件が必要という結論になります。ここまで出て初めて、「媒体経由で何件、学校経由で何件、実務実習の受け入れから何件」というチャネル別の内訳を考えられます。40件のうち媒体で25件しか見込めないなら、残り15件をどこから作るかが具体的な課題になります。
逆に、エントリーを40件集める見込みがまったく立たないのであれば、目標人数を1名に下げるか、中途採用と組み合わせるか、時期を分けて2回に分けるかという判断になります。数字を先に置くことの価値は、集めることではなく、無理な計画を早い段階で発見できることにあります。
歩留まりの数字はどこから持ってくるか
自社に過去の新卒採用実績があれば、それが最も信頼できる材料です。1〜2年分でも、説明会参加者数と面接数、内定数と入社数が残っていれば通過率は出せます。
実績がない場合は、仮置きから始めるしかありません。仮置きの数字を使うときは、次の3点を守ると精度が上がっていきます。
- 楽観と悲観の2パターンで置く(内定承諾率を50%と30%の両方で計算する、など)
- 各工程の実数を必ず記録する。年度が終わってから振り返るのではなく、月次で更新する
- 1年目の数字は「実績」ではなく「自社の初期値」として扱い、2年目に上書きする
薬学生の場合、内定から入社まで長い期間が空くため、内定承諾率と入社率を分けて見ておくと状況を把握しやすくなります。この期間の設計は新卒の内定辞退を防ぐ。内定から入社までのフォロー設計で詳しく扱っています。
職種を混ぜて計算しない
薬剤師と登録販売者、あるいは大卒と高卒を一つの表にまとめると、逆算が機能しなくなります。狙う学校も、動く時期も、通過率も違うためです。
- 薬剤師:薬科大学が対象。国家試験と実務実習の影響を受ける
- 登録販売者:専門学校・大学・高校など対象が広く、入社後の資格取得支援が前提になることが多い
- 高卒:学校とハローワークを経由し、応募の仕組み自体が異なる
職種ごとに別の表を作り、それぞれで逆算します。違いの整理は薬剤師と登録販売者、新卒採用の進め方はどう違うかを参照してください。高卒を含む場合は、一人一社制など応募の前提そのものが変わる点に注意が必要です。
母集団を増やすか、通過率を上げるか
必要数に届かないとわかったとき、打ち手は大きく2つです。
一つは入口を広げること。媒体を増やす、訪問する学校を増やす、実務実習の受け入れ枠を見直す、人材紹介の活用を検討する、といった動きです。もう一つは各工程の通過率を上げること。説明会の内容を変える、選考の日程調整を早める、面接官の伝え方を統一する、といった改善です。
どちらが先かは、表のどこで落ちているかで決まります。エントリーが十分あるのに説明会参加が少ないなら、入口を増やしても効果は限定的です。逆算表は、限られた時間と予算をどこに使うかを判断するための材料でもあります。
数字を年間スケジュールに載せる
必要数が決まったら、それを月に割り付けます。「エントリー40件」を1年通してではなく、「◯月までに20件、◯月までに残り20件」と置くと、遅れに気づくのが早くなります。薬学生は実務実習や卒業試験、国家試験の時期に動きが止まりやすいため、学事の時期を踏まえた配分にしてください(実習や試験の時期は年度や大学により変わるため、最新の情報を確認してください)。
月次で実数と計画を並べ、差が出た工程から手を打つ。この繰り返しが、2年目以降の精度を作ります。
逆算の表は作れても、「自社の場合、どの数字を仮置きすべきか」「どのチャネルで何件見込めるか」は、事業規模や地域、これまでの採用状況によって変わります。Talencoでは、目標人数の設定から母集団の設計、年間スケジュール、説明会・選考・内定フォローまでを一緒に組み立てています。実務は貴社が担い設計と実行管理を担当する伴走型と、実務まで一貫して対応する形の支援プランをご用意しています。
まずは無料相談(約30分〜・オンライン)で、来年度の採用目標から一緒に数字を置いてみませんか。現状をうかがったうえで、どこから着手するかをご提案します。