ブランクのある薬剤師を採用する。受け入れ側が決めておくこと
常勤の薬剤師求人を出しても応募が来ない。紹介会社に依頼しても、条件の良い他社に決まってしまう。そんな状況で見落とされがちなのが、資格は持っているが現場から離れている薬剤師です。出産・育児で数年空いた方、介護のために一度退職した方、調剤以外の仕事を経験してから戻ろうとしている方。人数として決して少なくない層でありながら、多くの求人が「即戦力」「経験者歓迎」と書くことで、この層を無自覚に排除しています。
ブランクのある薬剤師は、競合が少ないターゲットです。ただし、応募が来ない理由は待遇ではなく「自分にできるのか分からない」という不安であることが多く、そこを先回りして解消しない限り、条件をいくら上げても応募には結びつきにくくなります。
なぜこの層に競合が少ないのか
現場に空きがあるとき、採用側は「明日から一人で回せる人」を求めます。結果として求人票は経験年数や即戦力性を強調する内容になり、ブランクのある方は自分が対象外だと判断して応募を見送ります。多くの求人が同じ文面を出しているため、この層に向けた募集そのものが少ない状態が生まれています。
一方で、復職を検討している薬剤師は、条件の高さより「受け入れ体制があるか」で応募先を選ぶ傾向があります。給与や知名度で大手と競う必要が薄い領域だという点で、中小にとっては現実的な打ち手になります。給与以外の軸で選ばれる考え方は薬剤師の中途採用で「条件以外の選ばれる理由」をつくる方法でも整理していますが、ブランク層の場合は**「安心して戻れるかどうか」がほぼ唯一の判断軸になっている**点が異なります。
応募をためらう3つの理由
復職をためらう理由を分解すると、おおむね次の3つに集約されます。募集文でこれらに触れていない求人は、条件が良くても応募が伸びにくくなります。
| ためらう理由 | 本人の頭の中にある不安 |
|---|---|
| 調剤スキームの変化 | レセコンや電子薬歴のシステムが変わっていて、操作についていけないのではないか |
| 薬と制度の変化 | 新薬・後発品の切り替え、加算や算定要件が変わっていて、知識が古いのではないか |
| 業務範囲の広がり | 在宅訪問や無菌調製など、自分の経験にない業務を最初から求められるのではないか |
加えて、子育て中の方であれば「急な発熱で休むことをどう思われるか」という不安が重なります。これは勤務条件の問題というより、休んだときの周囲の反応が読めないことへの不安です。
募集文で先回りして書く
不安は「歓迎します」という一言では解消されません。ブランクがある人に向けた文章は、抽象的な歓迎ではなく、具体的な運用を書くことで機能します。
| よくある書き方 | 置き換えた書き方 |
|---|---|
| ブランクのある方も歓迎します | 3年以上現場を離れていた方の入社実績を想定した復職プログラムがあります |
| 丁寧に指導します | 最初の1か月は先輩薬剤師と2人体制で入り、単独での投薬は行いません |
| 経験不問 | 電子薬歴・レセコンの操作研修を入社初週に行います(使用システム名を明記) |
| 在宅業務あり | 在宅訪問への同行開始は本人と相談のうえ決めます。入社時点で必須ではありません |
| 家庭と両立できます | 当日の欠勤に備え、各店舗に◯名体制を敷いています。連絡先と代替手順を入社時に共有します |
ポイントは、免除・猶予の期間を数字で書くことです。「慣れるまで」「様子を見ながら」といった表現は、読み手からすると期限が読めず、かえって不安を強めます。1か月なのか3か月なのかを明示するだけで、応募の判断がしやすくなります。求人原稿全体の書き直しについては、社内で先に整理しておくと精度が上がります。
復職プログラムを先に決める
募集文に書ける内容は、社内で運用が決まっている範囲に限られます。したがって、原稿を書く前に受け入れ側で決めておくことがあります。以下は3か月を想定した組み立ての一例で、店舗規模や処方内容によって調整が必要です。
- 第1〜2週:システム操作と店舗内の物品配置の把握。ピッキングと薬歴入力を中心に、投薬は先輩の同席のもとで行う
- 第3〜4週:処方内容の多い薬剤から順に、疑義照会の判断基準を共有。最終鑑査は経験のある薬剤師が担当する
- 2か月目:単独での投薬を段階的に開始。最終鑑査は引き続き別の薬剤師が確認する運用を維持する
- 3か月目:到達状況を面談で確認し、鑑査の担当範囲や在宅同行の開始時期を本人と決める
鑑査や監査の扱いは、当面本人ひとりに最終責任を負わせない運用にしておくと、本人の負担も店舗のリスクも下げられます。ただし調剤の責任体制は法令と社内規程に沿う必要があるため、運用を決める際は管理薬剤師と必ず確認してください。
指導役を誰にするかも先に決めます。「店舗のみんなで見る」は、実質的に誰も見ていない状態になりやすい形です。特定の一人を指導役として明示し、その負荷を評価に反映させておくと続きます。教える側の体制づくりは管理薬剤師の後任を、辞めると言われる前に用意するとも重なる論点です。
面談で扱うべきこと、扱わないこと
面談では、ブランク期間の理由を細かく掘り下げる必要はありません。確認すべきは、離れる前にどの領域の処方を扱っていたか、どのシステムを使っていたか、復職にあたって不安に感じている業務は何か、勤務可能な時間帯と急な休みが発生する頻度の見込み、の4点です。
そのうえで、復職プログラムの内容をこちらから提示します。応募者が最も知りたいのは「入社後の最初の3か月がどうなるか」であり、これを面談の場で紙にして渡せるかどうかが、他社との差になることが多いところです。人材紹介会社経由の候補者に対しても同じで、担当者にこのプログラムを共有しておくと、推薦の段階で温度感が上がりやすくなります。紹介経由で決まりきらない構造については紹介会社から候補者は来るのに決まらない。原因は企業側にありますで整理しています。
短時間勤務から始める選択肢も用意する
いきなり常勤フルタイムを条件にすると、応募のハードルは大きく上がります。週3日・1日5時間といった形から始め、本人の希望と店舗の状況を見て勤務時間を増やす道筋を示しておくと、応募の入口が広がります。この場合、時間帯の刻み方と、常勤に移行する際の処遇の変わり方を、入社前に書面で確認しておくとのちのトラブルを避けやすくなります。
復職者の採用は、母集団形成の工夫というより受け入れ設計そのものです。決めるべきことを決めれば、募集文は自然に具体的になります。
自社の場合をどう組み立てるか
店舗の人員構成、処方の内容、在宅の比率によって、無理のない復職プログラムの形は変わります。どこまで免除できて、どこからは早めに担ってもらう必要があるのか。その線引きは、現場の状況を見ないと決められません。
Talencoでは、採用ターゲットの設定から募集文の作成、受け入れ体制の設計、入社後の初期定着までを一貫して伴走しています。実務は自社で行い設計と進行管理を任せる形と、実務まで含めてお任せいただく形の2つをご用意しています(支援プラン)。まずは無料相談(約30分〜・オンライン)で、貴社の現状をうかがいながら採用設計をご一緒します。