学会・薬剤師会・地域の勉強会を中途採用の接点にする
求人媒体に出しても応募が来ない、紹介会社からの推薦も止まっている。そんなとき、商圏内に薬剤師がいないわけではないことが多いものです。今の職場に大きな不満はなく、転職サイトにも登録していない。ただ「もっと面白い仕事があれば考える」という状態の薬剤師は、どの地域にも一定数います。この層は求人媒体の上には現れません。
彼らが定期的に顔を出す場所のひとつが、学術大会・薬剤師会の活動・地域の勉強会です。研修認定の単位取得や情報交換のために、転職を考えていない薬剤師でも足を運びます。この記事では、そうした場をどう採用の接点として扱うか、関わり方の種類と、その場で採用の話をしない代わりに何を残すかを整理します。
なぜ「採用の場ではない場所」が効くのか
求人媒体やスカウトで届くのは、すでに転職を意識している人です。一方で学会や勉強会に来ている薬剤師の大半は、転職意思がありません。だからこそ競合が少なく、かつ仕事の話を自然にできる相手として会えるという利点があります。
ただし、成果の出方は媒体とまったく違います。今月欠員を埋めるための手段にはなりません。半年後、一年後、あるいは「その人が転職を考えたときに最初に思い出す会社になる」ための仕込みです。欠員が出てから急いで参加しても間に合わないため、採用の緊急度が高くない時期にこそ着手する種類の打ち手だと考えてください。
即効性のあるチャネルと仕込みのチャネルをどう併存させるかは、年間の採用予算をどう配分するか。紹介手数料に全部食われる前にで整理しています。
関わり方を3段階で考える
同じ「勉強会に行く」でも、関わり方によって会える相手も伝わることも変わります。自社の状況に合わせて、どこから入るかを決めてください。
| 関わり方 | 主に知り合える相手 | 伝わること | 必要な負荷 |
|---|---|---|---|
| 参加する | 同じテーマに関心のある現場薬剤師、近隣の管理薬剤師 | 会社名と、誰が来ているか | 1回あたり半日〜1日 |
| 運営に協力する(会場提供・受付・共催) | 薬剤師会や勉強会の世話役、近隣法人の責任者 | 地域に対する姿勢、継続性 | 準備を含め複数日 |
| 演題発表・講師として話す | 発表内容に興味を持った薬剤師、学生、医療機関の関係者 | 自社が何に取り組んでいるか、業務の中身 | 資料作成を含め数週間 |
いきなり発表を目指す必要はありません。まずは参加から入り、何度か顔を合わせるうちに運営側から声がかかる、という順番が現実的です。
演題発表は負荷が大きい反面、効き方が違います。在宅での取り組み、フォローアップの工夫、医療機関との連携など、自社が実際にやっていることを発表すれば、「そういう仕事ができる会社なのか」という形で業務の中身が伝わります。これは求人票では伝えきれない情報です。条件以外で選ばれる理由をどう言語化するかは薬剤師の中途採用で「条件以外の選ばれる理由」をつくる方法にまとめています。
なお、発表の機会は若手薬剤師にとっても経験になります。経営者だけが出るのではなく、現場の薬剤師を送り出す形にすると、在籍者の育成と採用接点づくりを兼ねられることがあります。
その場で採用の話はしない
最も失敗しやすいのが、名刺交換の流れでそのまま「うちに来ませんか」と切り出すことです。勉強会は学びと情報交換の場であり、参加者も主催者もそれを前提に集まっています。採用目的が前面に出ると、本人に引かれるだけでなく、主催者側から次回以降声がかからなくなることがあります。
その場でやることは、採用の打診ではなく、後から連絡できる状態をつくることに絞ります。
- 名刺を渡し、受け取る。 社名・役職・連絡先に加え、自社がどんな分野に取り組んでいるかが一行入っていると話が続きやすくなります
- 話題になったテーマについて、後日資料を送る約束をする
- 自店舗で取り組んでいる内容に相手が関心を示したら、「一度見に来ませんか」と見学に誘う
- 自社で勉強会や症例検討を開いているなら、オープンにして案内する
この4つのうち、見学の誘いは特に効きます。採用の文脈ではなく「現場を見てもらう」という入り方であれば自然ですし、実際に現場を見た人は、後に転職を考えたときの選択肢に入りやすくなります。見学の組み立て方そのものは職場見学・体験勤務を選考に入れる。中途薬剤師のミスマッチを面接前に減らすが参考になります。
いただいた名刺は個人情報です。採用目的での連絡を前提に扱うのであれば、保管場所と、誰が連絡するかを社内で決めておいてください。頻繁な一斉送信は避け、相手が関心を示した話題に紐づく連絡にとどめるのが無難です。
年間の参加本数をどう決めるか
数をこなせば良いものではありません。同じ場に継続して顔を出すほうが、毎回違う場に単発で出るより関係が残りやすくなります。目安として、次のような組み立て方があります。
| 枠 | 内容 | 年間の本数の考え方 |
|---|---|---|
| 定点 | 地域の薬剤師会の勉強会など、継続的に参加する場 | 2〜3本を決めて、毎回同じ人が出る |
| 広げる枠 | 都道府県規模・全国規模の学術大会 | 年1〜2本。テーマが自社の方向性と合う年に出る |
| 自社開催 | 症例検討会やテーマ勉強会を自社で開き外部にも開く | 年1〜2回から。無理に増やさない |
店舗を空けて出るため、現場の調整が前提になります。出る人を決め、シフト上どう埋めるかを先に決めておかないと、数回で続かなくなることが多いものです。現場に協力を求める順番は現場が採用に協力してくれない。店舗を巻き込むための説明の順番で扱っています。
記録を残さないと一年で消える
この取り組みは成果が出るまで時間がかかるぶん、記録を残さないと「何となく参加しただけ」で終わります。最低限、次の4つを1行ずつ残してください。
- いつ、どの会に、誰が出たか
- 名刺交換した人(所属・話した内容)
- 後日連絡した・送った資料があるか
- 翌年も出るかどうかの所感
これを年1回見返すと、どの場に人がいて、どの場が空振りだったかが見えてきます。接点を持てた人が実際に応募につながるまで1年以上かかることもあるため、担当者が変わっても残る形で管理しておくことが重要です。年度末の振り返りの型は今年の採用を振り返る。来年のために残しておく記録にまとめています。
どこから手をつけるか迷ったら
学会や勉強会は、媒体や紹介会社の代わりになるものではありません。欠員を埋めるチャネルはチャネルとして回しながら、その外側で「転職を考えていない薬剤師に会える場」を少しずつ増やしていく、という位置づけが現実的です。どの場に、誰が、年に何回出るか。ここを決めるだけでも、翌年の母集団の見え方は変わります。
Talencoでは、採用チャネル全体の組み立てから、学校・地域との接点づくり、選考・定着までを伴走でご支援しています。自社の状況に合う進め方は支援プランをご覧いただくか、無料相談(約30分〜・オンライン)で採用設計をご一緒させてください。