年間の採用予算をどう配分するか。紹介手数料に全部食われる前に
年間の採用費がいくらになったかを、期末に集計して初めて知る。内訳を見ると、そのほとんどが人材紹介の手数料だった——こうした状態の薬局・ドラッグストアは少なくありません。ここで起きているのは「紹介が高い」という単純な問題ではなく、予算が事前に配分されていないという問題です。欠員が出るたびに紹介で埋め、その結果として金額が積み上がる。予算ではなく実績が先にある状態です。
この記事では、採用費を三つの層に分けて、金額の前に比率で枠を切る手順を整理します。具体的な金額水準には触れません。自社の規模や採用人数によって適正額は変わるため、先に決めるべきは「どこに何割を置くか」だからです。
採用費が「実績の積み上げ」になる構造
欠員対応型の採用では、予算の使い道が結果的に一つに寄ります。急いで人が必要なとき、最も確実に候補者が来るチャネルは人材紹介や派遣です。これは合理的な判断であり、紹介会社が悪いわけでもありません。席が空いている店舗にとって、時間を買えるチャネルは価値があります。
問題は、それ以外の層に一円も配分されないまま年度が終わることです。求人媒体の原稿を直す時間も、学校を回る交通費も、説明会の運営費も計上されない。すると翌年も同じ構造が再生産され、紹介以外に候補者が来る経路が育ちません。
**採用費の総額を下げる前に、内訳の形を変える。**これが配分の発想です。なお、1人あたりいくらまでなら許容できるかという判断は別の論点なので、薬剤師1人を採るのにいくらかけていいか。採用単価の考え方を先に読んでおくと、この記事の話がつながりやすくなります。
予算を三層に分ける
採用にかかる費用を、成果が出るまでの時間軸で三つに分けます。
| 層 | 主な使い道 | 成果が出るまでの目安 | 性質 |
|---|---|---|---|
| 即効 | 人材紹介の手数料、派遣費用 | 数週間〜数ヶ月 | 成功報酬が中心。使った分だけ席が埋まる |
| 継続 | 求人媒体の掲載費、求人検索エンジン、スカウト媒体、自社採用ページの改修 | 数ヶ月〜1年 | 原稿と運用の改善が翌月以降に効いてくる |
| 仕込み | 学校訪問の交通費、説明会・インターンの運営費、パンフレット等の資料制作、社内リクルーターの店舗離脱分 | 1年〜数年 | その年度の入社にはほぼ結びつかない |
三層の違いは「効くまでの時間」です。即効層だけに寄せると、毎年ゼロから席を買い直すことになります。継続層は、一度整えた求人原稿や採用ページが翌年も働くため、積み上がる性質があります。仕込み層は、新卒採用や学校との関係づくりのように、今年動いた分が2〜3年後の母集団になります。
このうち、経営会議で最も説明しにくいのが仕込み層です。
仕込み予算が最初に削られる理由
期中に予算を締めるとき、削られるのは決まって仕込み層です。理由ははっきりしていて、その年度の入社者数に直結しないからです。学校を5校回っても、今年の欠員は埋まりません。
しかしこの層を削り続けると、数年後も紹介以外の経路がない状態が続きます。新卒採用は特にそうで、薬学部6年制の学事に合わせて数年単位で接点を持つ必要があるため、単年で切ると翌年またゼロから始めることになります(学事との重ね方は薬学生の新卒採用スケジュールで整理しています)。
対処は一つで、金額ではなく比率で先に枠を切り、その枠は期中に他層へ流用しないと決めておくことです。金額で置くと「今年は厳しいので半分に」という話になりますが、比率で置けば総額が下がっても仕込み層は残ります。
比率を仮置きする手順
比率は、必要採用数と急ぎ度の二つから仮置きします。
1. 年間の必要採用数を出す
退職実績と出店計画から必要人数を割り出します。この部分が曖昧なまま予算を組むと、配分の議論が成立しません。出店が絡む場合は出店計画から採用人数を逆算するの手順が使えます。
2. うち「何ヶ月以内に埋めないと運営が止まるか」を分ける
必要採用数を、今すぐ必要な枠(管理薬剤師の欠員、出店直前の枠)と、年度内に埋まればよい枠、来年度以降の枠に分けます。この三分割が、そのまま三層の重みになります。
3. 三層の比率を仮置きする
たとえば緊急度の高い枠が多い年は即効層を厚く、来年度以降を見据える年は仕込み層を厚くします。配分の考え方を整理すると次のようになります。
| 自社の状況 | 即効 | 継続 | 仕込み |
|---|---|---|---|
| 今すぐ埋めるべき欠員が複数ある | 厚く | 中 | 薄くても枠は残す |
| 欠員は落ち着いているが紹介依存が高い | 薄く | 厚く | 中 |
| 数年先に新卒を定期採用したい | 中 | 中 | 厚く |
比率の具体的な数字は自社で置いてください。重要なのは、仕込み層をゼロにしない点と、継続層を「余ったら使う」扱いにしない点です。紹介の位置づけをどう変えるかは紹介会社の手数料が重い。紹介依存を下げるための採用チャネルの組み立て方で詳しく扱っています。
期中の見直しをいつ判定するか
配分は年初に決めて終わりではありません。判定のタイミングを先に置いておくと、感覚での増減を避けやすくなります。
- 第1四半期末:継続層の初期成果を見る。媒体掲載や求人原稿の改修から一定期間が経ち、応募が発生しているか。ゼロなら原稿や媒体選定の問題なので、増額ではなく見直しに動く
- 上半期末:必要採用数に対する充足率を確認する。大きく不足していれば即効層を一時的に厚くする判断があり得る。ただし仕込み層からは移さない
- 第3四半期末:翌年度の仕込み計画を立てる時期。学校訪問や説明会の年間計画はこのタイミングで固めておくと動きやすい
- 期末:チャネル別の入社者数と費用を並べ、翌年度の比率に反映する
判定日をカレンダーに入れておくだけでも、「気づいたら紹介だけになっていた」という事態は減らせます。
記録がないと翌年の配分が決まらない
配分を見直すには、チャネル別の入社者数と費用の記録が要ります。紹介手数料は請求書が残るので追えますが、媒体費や学校訪問の交通費は経費に紛れて見えなくなりがちです。年度の途中からでよいので、入社者一人ひとりについて「どの経路で来たか」を残しておくと、翌年の議論の材料になります。
また、紹介経由で候補者は来るのに決まらない状態なら、配分を変える前に選考側の設計を見る必要があります。この場合は予算の問題ではありません。
年間の採用予算は、総額の多寡より内訳の形で結果が変わります。即効・継続・仕込みの三層に分け、比率で枠を先に切り、判定のタイミングを置く。この順番で組めば、紹介手数料だけが積み上がる構造から抜けやすくなります。
とはいえ、自社の必要採用数をどう出すか、仕込み層に何をどこまで載せるかは、店舗数・地域・現在の欠員状況で変わります。Talencoでは、採用戦略の設計から説明会・選考・内定フォロー・初期定着までを伴走で支援しています。実務は自社で進めて設計と実行管理を任せる形から、実務まで一貫して対応する形まで、体制に合わせて選べます(支援プラン)。
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