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薬剤師が採れないなら、採る人数を減らせないか。事務・非薬剤師への業務移管から考える

「あと2名、薬剤師が必要」という前提で求人媒体を選び、紹介会社に依頼し、単価を計算する。採用計画の多くはこの順番で進みます。ただ、その「2名」がどこから出てきた数字なのかを確認すると、現場の残業時間や当番の回りにくさから逆算したものではなく、「今の業務量を今のやり方で回すには足りない」という感覚から出ていることも少なくありません。

薬剤師の求人は、そもそも母集団が限られています。採用の難易度を下げる方法が募集の出し方だけだと考えると打ち手は尽きますが、必要な人数そのものを動かせるなら、話は変わります。この記事では、採用計画を立てる前に業務を棚卸しし、薬剤師でなければできない業務と移管できる業務を線引きして、必要採用数を再計算する手順を整理します。

「2名足りない」の中身を分解する

必要人数の根拠は、たいてい次のどれかです。

  • 残業時間が慢性的に多い
  • 有給や急な休みを吸収できない
  • 管理薬剤師や特定の1人に負荷が集中している
  • 在宅や新規業務を増やしたいが人が出せない

このうち、資格が必要な業務の量が増えて足りないのか、それ以外の作業に薬剤師の時間が食われているのかは、分けて見る必要があります。前者なら薬剤師を採るしかありません。後者であれば、採用対象を薬剤師から事務スタッフに置き換えられる余地があります。

事務・登録販売者候補などの募集は、薬剤師の募集に比べて応募が集まりやすい傾向があります。地域の労働市場に候補者が存在するからです。同じ採用予算をかけたときの充足の見込みは、職種によって大きく違います。

1週間分の業務を書き出す

棚卸しは、感覚ではなく記録から始めます。特定の1店舗を選び、薬剤師本人に1週間だけ、やった作業を時間の目安つきで書き出してもらうやり方が現実的です。細かい分単位は不要で、「何にどれくらいの塊で時間を使っているか」が見えれば十分です。

書き出したものを、次の3つに分類します。

区分内容判断の考え方
A:薬剤師が行う業務処方内容の確認、疑義照会、鑑査、服薬指導、薬学的管理の記録判断など移管の検討対象にしない
B:条件つきで移管を検討できる業務調剤に関する補助的作業、薬剤師の指示・監督下で行う準備作業など法令・通知の範囲と社内手順の整備が前提。自社で必ず確認
C:資格を要しない業務在庫発注・棚卸し、レセプト業務、在宅の書類作成の下準備、電話一次対応、来客対応、清掃、シフト表作成、備品管理、患者への次回来局案内など事務スタッフへの移管を優先的に検討

多くの店舗で最初に手が付けられるのはCです。特に電話の一次対応と在庫関連、書類の下準備は、薬剤師の時間を細かく削っている割に、移管の障害が少ないことが多い領域です。

Bについては、どこまでを非薬剤師が担えるかは法令と行政の通知、および業務の具体的な内容によって判断が分かれます。年度や解釈で扱いが変わりうる部分でもあるため、社内で決める前に最新の通知や都道府県の薬務担当窓口、加入している団体などに必ず確認してください。この記事では「Bには検討の余地がある」という整理までにとどめます。

事務1名が生む余力を、薬剤師の人数に換算する

棚卸しの結果を、必要採用数の再計算につなげます。考え方はシンプルで、移管できる業務の合計時間を、薬剤師1人あたりの実働時間で割ります。

以下は考え方を示すための架空の例です。実際の数字は自社の記録から出してください。

項目架空の例
店舗で移管候補(C区分)に使われている時間薬剤師合計で週12時間
事務スタッフが吸収できる想定割合このうち8割=週約10時間
薬剤師1人の週あたり実働約40時間
生まれる余力の換算約0.25人分

1店舗あたり0.25人分でも、3〜4店舗で1人分に届きます。複数店舗を運営している場合、事務スタッフを店舗専属ではなく本部・エリア担当として置き、レセプトや発注、書類作成をまとめて引き受ける形にすると、換算値はさらに上がることがあります。

ここで出した「必要薬剤師数から差し引ける人数」を反映して、採用計画を組み直します。人数と採用単価の関係は薬剤師1人を採るのにいくらかけていいか。採用単価の考え方で整理しています。出店を控えている場合は、出店計画から採用人数を逆算する。ドラッグストアの採用計画のつくり方の逆算と合わせて見てください。

移管を前提にした進め方

業務移管は「決めた翌週から回る」ものではありません。採用計画と並行して進める前提でスケジュールを引きます。

時期やること
1〜2週目対象店舗で業務を書き出す。A・B・Cに分類する
3〜4週目Cの移管範囲を確定。Bは法令・通知の確認と社内手順の検討
1〜2ヶ月目事務スタッフの募集要件・勤務時間を設計し、募集開始
2〜4ヶ月目入社。移管する業務を1つずつ引き渡し、手順書を残す
3〜6ヶ月目移管後の実働を再計測し、薬剤師の必要採用数を確定させる

事務スタッフの募集は、フルタイム1名にこだわらず短時間勤務の複数名で組む方法もあります。時間の刻み方で応募数が変わる点はパート薬剤師が集まる募集条件のつくり方。時間の切り方で応募数が変わると同じ考え方が使えます。

移管で気をつけたいのは、引き渡しを口頭で済ませてしまうことです。手順書がないまま任せると、判断に迷った作業が薬剤師に戻ってきて、結果として時間が減りません。移管した業務は「誰が」「どの手順で」「どこまで判断してよいか」を紙にしておくと、担当者が変わっても残ります。

移管では埋まらない部分がある

当然ながら、業務移管で薬剤師の採用がゼロになるわけではありません。管理薬剤師の配置、在宅の拡大、開局時間の延長、退職に備えた層の厚みなど、資格保有者の頭数がなければ成立しない部分は残ります。移管の目的は、採用を不要にすることではなく、採用しなければならない人数を実態に合わせて絞り込むことです。

絞り込めれば、限られた採用予算と工数を1〜2名に集中できます。求人票の作り込み、選考スピード、条件提示、受け入れ体制まで手が回るようになり、1名あたりの決まりやすさが上がる方向に働きます。逆に、必要人数を過大に置いたまま募集を出し続けると、どの募集も中途半端になりがちです。

まず1店舗で1週間の書き出しから始めてみてください。そこで出た数字が、来年度の採用計画の出発点になります。


必要採用数の再計算から、事務スタッフと薬剤師の採用スケジュールの組み方まで、外から一緒に整理することもできます。Talencoでは新卒・中途の両方について、採用戦略の設計から選考・入社後の初期定着までを伴走支援しています。支援の範囲は支援プランをご覧ください。

現状の業務配分と必要人数の見立てを持ち寄っていただければ、無料相談(約30分〜・オンライン)で採用設計をご一緒します。

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