外国籍スタッフを店舗で採用する。在留資格と配置の考え方
レジや品出し、調剤事務、登録販売者候補といった薬剤師免許を必要としないポジションで、日本語で応募してくる外国籍の方が増えたという声を聞きます。人柄も勤務可能日も合っているのに、「在留資格のことがよく分からないから」という理由だけで見送ってしまうのは、母集団を自ら狭めることになります。
一方で、在留資格の確認を誤ると企業側の責任が問われる場面もあります。ここでは、店舗で外国籍スタッフを採用するときに何を確認し、採用後に何を設計しておくかを順に整理します。制度の細部は個別事情で判断が変わるため、本記事は全体像の把握にとどめ、最終的な可否は出入国在留管理庁やハローワーク、行政書士・社会保険労務士といった専門家への確認をお願いします。
まず押さえる前提:資格と在留資格は別の話
混同しやすいのが「資格」と「在留資格」です。薬剤師免許や登録販売者の資格は業務ができるかどうかの話、在留資格は日本で働けるかどうかの話で、別々に確認します。
在留資格は大きく三つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 区分 | 例 | 店舗業務での扱い |
|---|---|---|
| 就労の制限がない | 永住者、日本人の配偶者等、定住者など | 業務内容の制限は基本的にない |
| 就労できる範囲が決まっている | 技術・人文知識・国際業務、特定技能など | 在留資格ごとに認められた業務に限られる。店舗の現場作業が該当するかは個別判断 |
| 原則として就労できない | 留学、家族滞在など | 資格外活動許可があれば、定められた時間の範囲で就労できる場合がある |
レジ・品出し・清掃といった現場作業が中心の仕事は、「技術・人文知識・国際業務」では認められにくいとされています。特定技能についても、受け入れが認められる分野と業務は制度上定められており、自社の業務が当てはまるかは個別に確認が必要です。
実務上、店舗で最初に出会いやすいのは「就労の制限がない区分の方」と「留学生などの資格外活動許可を持つ方」です。フルタイムの正社員として迎えたい場合、就労の制限がない区分の方が検討しやすいというのが出発点になります。
在留カードで何を確認するか
採用を決める前に、在留カードの原本を本人から提示してもらい、以下を確認します。写しを保管する場合は、利用目的を本人に伝えたうえで取得します。
| 確認箇所 | 見るポイント |
|---|---|
| 在留資格 | どの区分か。就労の制限がない区分かどうか |
| 在留期間(満了日) | 期限が近い場合、更新予定を本人に確認する |
| 就労制限の有無 | 「就労不可」と記載されている場合、裏面の許可欄を確認 |
| 資格外活動許可(裏面) | 許可の有無と、許可された活動の範囲・時間の上限 |
| カードの有効性 | 出入国在留管理庁のサイトで在留カード番号の失効情報を照会できる |
資格外活動許可がある場合、就労できる時間には上限が定められています。上限や取扱いは変わることがあるため、採用時点の最新の案内を必ず確認してください。シフトを組む側としては、週あたりの上限を超えないよう勤怠管理の仕組みに組み込んでおくことが重要です。複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、他社での勤務も含めて上限が判断されます。
雇い入れたとき・離職したときには、ハローワークへの外国人雇用状況の届出が事業主に義務づけられています。雇用保険の対象になるかどうかで様式や期限が変わるため、こちらも最新の案内を確認してください。
配置:言葉の負担が大きい場面を切り分ける
店舗業務は一律ではありません。日本語力を理由に採用を見送る前に、業務を分解して「どこで言葉の負担が大きいか」を見ます。
言葉の負担が大きいのは、お客様の症状を聞き取って医薬品を提案する場面、服薬中の薬や既往歴に関わるやりとり、クレーム対応、電話応対です。逆に、品出し・発注補助・在庫整理・レジ・清掃・売場づくりは、手順を覚えれば言葉の比重が下がります。調剤事務であれば、レセプト関連の入力作業と、患者さんへの最初の声かけとでは負担がまったく違います。
業務の分解は、外国籍かどうかに関わらず人員設計の基本です。薬剤師の業務を見直す考え方は薬剤師が採れないなら、採る人数を減らせないか。事務・非薬剤師への業務移管から考えるでも整理しています。
なお、医薬品の販売や相談対応は資格の有無で可否が決まります。無資格のスタッフに任せられる範囲は、国籍にかかわらず同じ線引きです。
指示の出し方を、個人の工夫に任せない
指示が伝わらないとき、原因が日本語力なのか、そもそも手順が言語化されていないのかを分けて考えます。後者であれば、日本人スタッフにも同じ問題が起きています。
- 口頭で一度伝えて終わりにせず、写真つきの手順書を残す
- 一文を短くし、「〜していただく形になります」のような婉曲表現を避ける
- 「分かりましたか」ではなく「次に何をしますか」と聞いて、理解を行動で確認する
- 専門用語(一包化、後発品、レセプトなど)は最初にリスト化して意味を添える
手順書と指導役の設計は、社会人経験の浅い新人を迎えるときと共通する部分が多くあります。18歳の新入社員を受け入れる。大卒中途しかいない店舗で何を変えるかもあわせて参考にしてください。
資格取得を支えるなら、試験が日本語である前提で組む
登録販売者試験は日本語で実施され、専門用語や漢字が多く出題されます。母語話者でも対策が必要な試験ですから、支援の設計は早めに始めたほうがよいでしょう。
- 受験する都道府県と出願時期を一緒に確認する(実施時期・内容は年度により変わるため、最新の実施要領を確認)
- 過去問を章ごとに区切り、用語の読みと意味を先に押さえる
- 学習時間をシフトの中にどう確保するか、受験費用やテキスト代の負担をどうするかを先に決める
- 店舗管理者の要件に関わる従事期間は、記録を残しておく
無資格から育てる場合の全体設計は資格なしの人を採って登録販売者に育てる。募集条件と支援の決め方で整理しています。支援の条件は、国籍で差をつけず、同じ制度として全員に適用する形にしておくと説明がしやすくなります。
既存スタッフへの説明を飛ばさない
受け入れがうまくいかない原因の多くは、現場への説明不足です。「人が足りないから」だけでは、指導の負担を負う側は納得しません。どのポジションを担ってもらうのか、誰が指導役になるのか、指導の時間を業務としてどう扱うのか、評価にどう反映するのかを先に決め、配属前に店舗へ伝えます。
接客で言葉に詰まったときに誰が代わるかというルールも、本人任せにしないほうがよいでしょう。「医薬品の相談は資格者に引き継ぐ」という線引きを店舗の共通ルールとして置けば、本人も周囲も動きやすくなります。
採用要件や募集文の表現は、国籍・年齢・性別などの制限として受け取られない書き方が求められます。業務上必要な要件(日本語でのやりとりの程度など)は、仕事の内容として具体的に書くほうが、応募者にも社内にも伝わります。
外国籍スタッフの採用は、在留資格の確認という手続きの話と、業務の切り分け・指導体制という設計の話が同時に必要になります。どちらか一方だけでは、採用できても続きません。
Talencoでは、薬剤師・登録販売者・事務スタッフまで含めた採用の設計から、受け入れ体制づくりまでを伴走支援しています。手続きの判断は専門家と連携しつつ、「どのポジションを誰で埋めるか」という計画づくりからご一緒できます。支援プランをご覧いただき、まずは無料相談(約30分〜・オンライン)で、自社の人員計画からご一緒に整理させてください。