60代以降の薬剤師を戦力にする。募集条件と任せる範囲の決め方
常勤の薬剤師募集に応募が来ない一方で、「以前は別の薬局で働いていた」「フルタイムは難しいが週2日なら」という60代以降の方からの問い合わせは届く。そういう状態にある薬局・ドラッグストアは少なくありません。定年後の再雇用層や、いったん現場を離れたベテランは、競合が積極的に狙っていないぶん接点を持ちやすい層です。
一方で、「体力が持つのか」「電子薬歴を覚えてもらえるのか」「いつまで働いてもらえるのか」という不安から、受け入れの設計を決めきれないまま募集を止めてしまうケースもあります。この記事では、募集条件の書き方と任せる業務の切り出し方、そして勤務継続の見通しをどう確認していくかを整理します。
年齢を条件に書けない前提で募集文をつくる
求人の募集・採用では、年齢にかかわりなく均等な機会を与えることが原則とされており、年齢制限を設けられるのは法令で認められた例外に限られます(制度の詳細や例外の範囲は改正で変わりうるため、実際に募集を出す前にハローワークや最新の要領で確認してください)。
つまり「60歳以上歓迎」と書いて呼び込むことはできません。代わりに、その層が気にしている点を働き方と業務内容の言葉で書くことになります。年齢ではなく条件で語ると、結果として復職層や子育て中の薬剤師にも届くという副産物があります。
| 伝えたい内容 | 年齢で書かない表現の例 |
|---|---|
| 体力面の負荷が軽い | 「調剤室内に座って作業できる椅子あり」「1日の処方枚数の目安は○枚前後」 |
| ブランクがあっても可 | 「復職者の受け入れ実績あり。最初の1か月は先輩と同じシフトで入ります」 |
| 電子機器への不安 | 「電子薬歴・レセコンの操作は手順書と個別研修あり。入社時の操作経験は問いません」 |
| 短い日数・時間で可 | 「週2日から/1日4時間から相談可」「勤務曜日は固定でも可」 |
求人原稿そのものの直し方は薬剤師の求人票に応募が来ない。原稿を書き直す順番で扱っています。あわせて、勤務時間の刻み方はパート薬剤師が集まる募集条件のつくり方の考え方がそのまま使えます。
条件面は「立ち仕事」と「機器」で分けて考える
この層の応募をためらわせる理由は、給与よりも身体的な負荷と業務環境への不安に寄っていることが多いです。募集前に、次の4点について自社の実態を言語化しておくと、面談での説明が具体になります。
- 立ち仕事の時間:投薬カウンターに立ち続ける時間はどの程度か。座って行える業務(鑑査、薬歴、在庫管理)に切り替えられる余地があるか
- 勤務の刻み:午前のみ・午後のみを設定できるか。連続勤務を避けられるか
- 電子機器:電子薬歴、オンライン服薬指導、タブレット入力などをどこまで使うか。使えない場合に代替手段があるか
- 移動:在宅訪問がある場合、運転は必須か。同行や公共交通での対応が可能か
ここを曖昧にしたまま採用すると、入社後に「思っていたより立ち続ける」「機器の操作を誰も教えてくれない」という形でずれが出ます。復職時の受け入れ設計はブランクのある薬剤師を採用する。受け入れ側が決めておくことと重なる部分が多いので、そちらも参考にしてください。
任せる範囲を先に切り出す
「人手が足りないので全部お願いしたい」と考えると、結果としてフルタイム前提の業務設計になり、この層の強みが活きません。経験の厚さが効く業務を先に切り出すほうが、短い勤務時間でも戦力になりやすくなります。
| 任せやすい業務 | 経験が効く理由 | 事前に決めること |
|---|---|---|
| 調剤の監査・鑑査 | 判断の精度が経験に依存し、座って行える | 最終責任者は誰か、疑義照会の連絡ルート |
| 在宅訪問の同行・同席 | 患者・家族への説明に慣れている | 運転の可否、訪問件数の上限、記録の入力担当 |
| 新人・若手の指導 | 現場の教え方を体得している | 指導範囲と評価への関与、指導時間の勤務扱い |
| かかりつけ・服薬フォロー | 継続的な関係づくりに向く | 担当患者数、連絡手段、不在日の引き継ぎ |
| 薬歴・在庫・期限管理 | 抜けに気づきやすい | どこまでを任せ、誰が確認するか |
指導を任せる場合は、教える順番や到達基準を会社側で用意しておくと負担が偏りません。基準づくりは新卒薬剤師の1年目に何をどこまで。独り立ちの基準を先に決めるで整理しています。
勤務継続の見通しは「定期的に聞く」仕組みにする
「いつまで働けますか」を入社時に一度聞いて終わりにすると、急な退職や勤務日数の変更に対応できません。かといって頻繁に体調を尋ねるのは本人の負担になります。定期の面談に組み込み、聞く項目を決めておく形が現実的です。
- 契約更新や年度替わりのタイミングで、翌半年〜1年の勤務日数・曜日の希望を確認する
- 体調そのものを問い詰めるのではなく、「今の勤務量は無理なく続けられそうか」「変えたい点はあるか」を聞く
- 減らしたい・辞めたいと言われたときの選択肢(日数の縮小、業務の入れ替え、後任育成の開始時期)をあらかじめ用意しておく
- 高年齢者の雇用確保に関する制度は改正されることがあるため、契約形態や上限年齢の設定は最新の法令・指針を確認したうえで決める
この確認を面談として仕組みにしておくと、勤務量の縮小を「退職」ではなく「調整」として扱えるようになり、結果的に在籍期間が延びることがあります。
まず決めるのは、任せる業務のほう
60代以降の薬剤師を戦力にできるかどうかは、募集文の巧拙よりも、任せる業務を切り出せているかで決まる場面が多いです。業務が決まれば、必要な勤務時間と条件は後から書けます。逆に条件から先に決めると、フルタイム前提の設計に引き戻されます。
自社のどの業務を切り出せるか、どの店舗から始めるか、募集文にどう落とすか。このあたりは店舗の状況によって答えが変わります。Talencoでは新卒・中途の両方を対象に、採用ターゲットの設定から募集条件の設計、選考と入社後の定着までを伴走で支援しています。支援の範囲は支援プランをご覧ください。まずは無料相談(約30分〜・オンライン)で、採用設計をご一緒します。