社員インタビューを採用用に撮る。誰に何を聞くと効くか
採用ページをつくり直そうという話になると、たいてい「社員の声を載せましょう」となります。ところが出来上がったものを読むと、「患者さんから“ありがとう”と言われたときにやりがいを感じます」「アットホームな職場です」という文章が3人分並んでいるだけ、ということが少なくありません。書いた側は嘘を書いていないのに、読んだ候補者の判断材料にはなっていない状態です。
社員インタビューは、候補者が「この会社で働く自分」を具体的に想像するための材料です。逆に言えば、想像の解像度が上がらない情報は、どれだけ枚数を増やしても効きません。ここでは、誰に出てもらうか、何を聞くか、撮影と掲載の許可をどう取るか、そして人が入れ替わったときにどう差し替えるかまでを、実務の順番で整理します。
「やりがい」で終わるインタビューが読まれない理由
候補者が知りたいのは、やりがいがあるかどうかではありません。すでに薬剤師・登録販売者として働いている人、あるいはこれから働く学生にとって、やりがいの存在はある程度前提になっています。知りたいのは「自分の1日がどうなるか」「入る前に不安だったことは、入ったあとどうなったか」という具体です。
もう一つの理由は、良いことしか書いていない文章は、そもそも信用されにくいという点です。候補者は口コミサイトも求人票も見比べたうえで自社サイトに来ます。大変な部分が一行も出てこないインタビューは、読み手に「編集されている」と受け取られやすいのが実情です。正直に書かれた不便が一つあるだけで、他の記述の信頼度が上がります。
なお、採用ページ全体に何を載せるかは薬剤師の採用ページに何を載せるか。候補者が最後に確認する情報で扱っています。インタビューはその一部品として置く前提で考えてください。
誰に出てもらうか。4つの枠で決める
一人のエース社員に長いインタビューを載せるより、立場の違う複数名を短く並べるほうが、候補者は自分に近い人を見つけやすくなります。最低限おさえたいのは次の4枠です。
| 枠 | 想定する読み手 | この人にしか語れないこと |
|---|---|---|
| 新卒3年目 | 薬学生、既卒の若手 | 1年目に何ができるようになったか、独り立ちまでの流れ |
| 中途1年目 | 転職を検討中の薬剤師 | 前職との違い、入社直後のギャップ、慣れるまでの期間 |
| パート・時短勤務 | 育児や介護と両立したい層 | シフトの実際、急な休みへの対応、周囲の反応 |
| 管理薬剤師・店長 | 管理職候補、キャリアを気にする層 | 任される範囲、上の役割の見え方、人の育て方 |
4枠すべてを一度に揃える必要はありません。いま採りたいターゲットに近い枠から2つ着手し、年に1〜2本のペースで足していく形で十分です。新卒を狙うなら新卒3年目、中途の欠員補充が急ぐなら中途1年目が先になります。
人選では、話が上手い人より「入社前と入社後の差を覚えている人」を優先します。在籍が長い人ほど、入る前に何を不安に思っていたかを忘れています。中途1年目・新卒3年目という指定に意味があるのはこのためです。
必ず聞く4つの質問
質問は多く用意するより、全員に同じ4問を聞いて横並びで読めるようにするほうが効きます。
1. 入社前に不安だったことと、実際どうだったか
「前は門前が内科だけだったので、皮膚科の処方に対応できるか不安でした。最初の2ヶ月は先輩と一緒に入って、疑問はその場で聞ける状態でした」——この粒度まで降りると、候補者は自分の不安に重ねられます。不安が解消した人だけでなく、「思ったより時間がかかった」と答える人がいても、そのまま載せたほうが読まれます。
2. 1日の時間配分
出勤から退勤までを、おおまかな時間と業務で語ってもらいます。処方箋の波が来る時間帯、昼休憩の取り方、在宅訪問がある日とない日の違い、残業がどのくらい発生するか。ここが具体的であるほど、入社後のギャップが減ります。 「日によります」で終わらせず、忙しい日と落ち着いた日の両方を聞いてください。
3. 前職・他社と比べてどう違うか
中途なら前職との違い、新卒なら就職活動で見た他社との違いです。他社を貶める表現にならないよう、事実の差(人数、処方科目、任される範囲、決裁の速さ)で語ってもらいます。規模の小ささを価値に置き換える考え方は中小薬局が大手チェーンとの採用競争で勝てる場所はどこかも参考になります。
4. 正直に大変なこと
一番外されやすく、一番効く質問です。人員が少ない日の負荷、勉強が必要な領域、店舗によるやり方の差。ここを載せるかどうかは経営判断になりますが、載せる場合は「会社として何をしているか」を一言添えると、単なる不満の掲示にはなりません。
撮影と掲載許可で確認すること
薬局・店舗での撮影は、一般企業より制約が多くなります。撮る前に次を確認してください。
| 項目 | 確認の内容 |
|---|---|
| 本人の許可 | 撮影の可否と、掲載範囲(自社サイト/説明会資料/求人媒体/SNS)を個別に確認 |
| 氏名の出し方 | 実名・イニシャル・仮名のどれにするか。顔出しの可否と分けて確認 |
| 掲載期間 | 退職・異動後の扱いをこの時点で決めておく |
| 写り込み | 処方箋、薬歴画面、お薬手帳、患者名の入った棚ラベル、待合の患者が入っていないか |
| 撮影時間帯 | 患者が写らないよう、開局前・閉局後・調剤室内で完結させるのが無難 |
写り込みは撮影時にチェックしたつもりでも、後から画面の隅に残っていることがあります。公開前にもう一度、拡大して見る工程を入れてください。SNSに二次利用する場合の撮影ルールは薬局の採用にSNSは要るのか。始める前に決める運用範囲で整理しています。
許可は口頭で済ませず、簡単な書面かメールで残します。あわせて「本人から取り下げを申し出られた場合は速やかに削除する」と伝えておくと、協力を得やすくなります。
異動・退職したときの差し替え運用
インタビューが古びる主因は、本人が辞めるか異動することです。運用を決めずに放置すると、退職者が笑顔で「働きやすい職場です」と語るページが残り続けます。
決めておくことは3つです。第一に、退職手続きのチェックリストに「採用ページ・資料への掲載有無の確認」を入れること。第二に、退職者の掲載を続ける場合の基準(本人の同意があれば一定期間残す、円満でない退職は即削除、など)を先に文章にしておくこと。第三に、記事内に「2024年入社」のような入社年の表記を使い、「入社3年目」という年数表記を避けることです。年数で書くと毎年書き換えが必要になります。
差し替え前提で考えると、一本あたりを作り込みすぎないほうが結果的に回ります。年1回、決算後などのタイミングで全件を見直す日を決めておくと、担当者が兼務でも回しやすくなります。
文章は整えすぎない
最後に、書き方の話です。インタビュー原稿を社内で回覧すると、話し言葉が敬語に直され、固有の事情が削られ、どこの会社にも当てはまる文章に収束していきます。この工程で失われるのが、まさに候補者が読みたかった部分です。
言い間違いや文法の乱れは直してかまいませんが、「最初の3ヶ月は正直しんどかったです」といった言い回しは残す。数字や固有名詞(処方科目、1日の処方箋枚数の目安、通勤時間)も、出せる範囲で残す。読み物として整っているかより、その人の口から出た言葉に見えるかを基準にしてください。
社内の若手に協力してもらう場面が増えるなら、学校訪問への同行とあわせて役割として整理する方法もあります(若手薬剤師を学校訪問に連れて行く。社内リクルーターの立て方)。
社員インタビューは、単体で応募を生む施策ではありません。求人票、採用ページ、説明会、面接という一連の流れのどこに置き、誰に読ませるかを決めて初めて機能します。素材づくりから母集団形成、選考、入社後の定着までをどうつなぐかは、支援プランでご一緒しています。まずは無料相談(約30分〜・オンライン)で、いまある素材と足りない素材を一緒に棚卸しするところから始めてみてください。