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人材紹介の契約書で見るところ。手数料率より先に確認する条項

人材紹介会社から契約書を渡されたとき、真っ先に目が行くのは手数料率だと思います。ただ、実際に支払う金額と、後で揉めるかどうかを決めているのは、率そのものではなく「何に率を掛けるか」「どんなときに返ってくるか」「いつ払うか」といった周辺の条項です。ここが曖昧なまま契約すると、入社後に想定と違う請求書が届いたり、早期退職時の話し合いが長引いたりします。

この記事は、紹介会社と新しく契約する前、または既存契約を更新する前に、どこを読めばよいかを5点に絞って整理したものです。値切り方の話ではありません。後から認識の食い違いが起きない状態にすることが目的です。なお、紹介会社は採用のパートナーであり、条件を明確にしておくことはお互いにとって進めやすさにつながります。

手数料率だけ比べても、支払額は決まらない

有料職業紹介事業は厚生労働大臣の許可を受けた事業者が行うもので、手数料の取り方も届出に基づきます。契約前に許可番号と手数料表(届出の内容)を確認しておくと、書面に書かれた条件の根拠がたどれます。

そのうえで、契約書で先に読む条項は次の5つです。

確認する条項何が書かれているか曖昧だと起きること
手数料の算定基礎理論年収に何を含めるか想定より請求額が大きくなる
返還規定早期退職時の返金期間と割合「対象外」と言われる
支払期日入社日起算か請求書起算か入社直後に資金が出る
候補者情報の有効期間紹介から何ヶ月間有効か後日の応募で手数料が発生
重複時の扱い複数経路で応募が来たとき二重請求・関係悪化

以下、順に見ていきます。

1. 手数料の算定基礎——「理論年収」の定義

手数料は、採用者の想定年収(理論年収)に一定割合を掛けて算定されるのが一般的です。争点になるのは率ではなく、理論年収に何を含めるかです。

確認したいのは次の項目です。

  • 基本給と固定的な手当(住宅手当、資格手当など)は当然含まれる
  • 賞与は「前年度実績」か「想定支給月数」か。支給が業績連動なら、どの数字を使うか
  • 時間外手当の扱い。固定残業代を設定している場合は含まれることが多い
  • 変動性の高い手当(在宅訪問の件数手当、管理薬剤師手当の着任前など)を含めるか
  • 引越費用や赴任支度金などの一時金を含めるか

薬剤師の場合、管理薬剤師手当や在宅の件数に連動する手当があると、「就任予定だが着任は半年後」といったケースで解釈が分かれます。契約書に定義が書かれていないときは、覚書でも構わないので「理論年収は基本給+固定手当×12+賞与(前年度実績)とする」といった形で文章にしておくと安全です。

交渉できる余地としては、率そのものより「変動手当を算定基礎から外す」「賞与は実績ベースとする」という定義の調整のほうが現実的なことが多いです。

2. 返還規定——期間と割合の階段

入社した薬剤師が早期に退職した場合、手数料の一部が返還される取り決めを置いている紹介会社は多くあります。ただし、これは法律で義務づけられた制度ではなく、あくまで契約による取り決めです。書かれていなければ返ってきません。

読む点は3つです。

  1. 返還の対象期間(入社日から何ヶ月以内か)
  2. 期間ごとの返還割合の階段
  3. 返還の対象外となる条件

階段は下のような形で書かれることが多く、具体的な期間・割合は契約によって異なります。

退職時期(入社日起算)返還割合の書かれ方の例
1ヶ月以内高い割合を返還
1〜3ヶ月中程度の割合を返還
3〜6ヶ月低い割合、または対象外
6ヶ月超対象外とされることが多い

見落としやすいのが3の「対象外条件」です。会社都合の解雇、試用期間中の本採用見送り、労働条件が求人票と異なっていた場合などは返還対象から外れる旨が書かれていることがあります。試用期間の設計と合わせて確認しておくとよいでしょう(試用期間を薬剤師採用でどう使うか。期間と評価の決め方)。

また、返還ではなく「次回紹介時の手数料充当(フリーリプレイスメント)」とする契約もあります。次の採用予定がない会社にとっては現金返還のほうが実質的です。どちらを選べるかは相談できることがあります。

3. 支払期日——入社日起算か、請求書起算か

支払期日は、入社日を起算点にするか、請求書発行日を起算点にするかで実際の支払いタイミングが変わります。入社月の月末締め翌月末払い、といった形に揃えられれば、資金繰りの見通しは立てやすくなります。

あわせて、返還規定との関係も見ておきます。入社直後に全額を支払った後で早期退職が起きると、「支払済み分の返還請求」という手間が発生します。分割払い(入社時と在籍◯ヶ月経過時など)に応じてもらえる場合もあるため、支払条件の相談は率の交渉より通りやすいことがあります。

採用費の全体設計と合わせて考えたい方は、薬剤師1人を採るのにいくらかけていいか。採用単価の考え方もあわせてご覧ください。

4. 候補者情報の有効期間

紹介を受けた候補者が一度は選考に進まなかった、あるいは辞退した。その半年後に同じ人が自社サイトから応募してきた——このとき手数料が発生するかどうかは、契約書の「候補者情報の有効期間」に書かれています。

紹介から一定期間内に採用した場合は紹介経由とみなす、という条項が置かれているのが通例です。期間の長さは契約によって差があるため、複数社と契約するなら揃えておくと管理が楽になります。

実務上は、紹介を受けた候補者の氏名・紹介日・紹介元を記録に残すことが前提になります。応募者管理の仕組みがないと、そもそも重複に気づけません(応募者を表で管理する。選考中の取りこぼしをなくす最小の仕組み)。

5. 重複応募・他社経由との競合時の扱い

同じ薬剤師が複数の紹介会社から、あるいは紹介会社と自社応募の両方から届くことがあります。薬剤師は複数のエージェントに同時登録していることが多く、珍しい出来事ではありません。

契約書で見るのは次の2点です。

  • 複数社から同一候補者の紹介があった場合、どちらを紹介元とするか(先に紹介した側、という定め方が多い)
  • 自社応募と紹介が重なった場合の判定基準(応募日時か、紹介日時か)

決めておきたいのは、社内で「応募の受付日時と経路を必ず記録する」という運用です。判定の根拠が記録にあれば、後から証明できます。候補者本人に「どちらから応募したか」を問い詰める形にならないよう、連絡の順番も事前に決めておくと関係を損ねません。

交渉は「値下げ」ではなく「定義を揃える」

ここまでの5点は、いずれも金額を下げる交渉ではなく、条件を明確にする話です。紹介会社側も、後から揉めるより先に決まっているほうが動きやすいことが多いものです。

複数社と契約するなら、算定基礎の定義・返還期間・候補者情報の有効期間の3つだけでも各社で揃えておくと、社内の管理が一気に楽になります。契約内容が会社ごとにバラバラだと、担当者が兼務の会社では運用が続きません。

そのうえで、紹介からの採用を増やすには契約条件より依頼の仕方が効きます。何を伝えるかは人材紹介会社に薬剤師の求人を出すとき、最初に何を伝えるかに、紹介以外のチャネルとの配分は紹介会社の手数料が重い。紹介依存を下げるための採用チャネルの組み立て方にまとめています。

なお、契約書の法的な解釈について判断が必要な場合は、顧問の弁護士・社会保険労務士にご確認ください。この記事は採用実務の側から、読む場所を絞るための整理です。

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