店長・管理薬剤師が面接官をする会社で、評価がぶれないようにする
薬局やドラッグストアでは、採用専任の担当者を置いている会社のほうが少数です。面接をするのは、店舗を回している店長や管理薬剤師、エリア長。本業の合間に面接を入れ、終わったら「まあ、いい人だと思います」という一言が本部に返ってくる。同じ候補者を別の店長が見たら、まったく違う評価になったかもしれない——そういう不安を抱えたまま採用を続けている会社は珍しくありません。
面接官を訓練するのは時間がかかります。ただ、評価がぶれる原因の多くは面接官の能力ではなく、「何を見るか」と「誰が決めるか」が決まっていないことにあります。この記事では、現場が面接をする前提のまま、評価のばらつきを減らすための最小限の設計を整理します。
なぜ評価がぶれるのか
現場の面接官が悪いわけではありません。むしろ、店舗の実情を知っている人が面接に出ることは、候補者にとっても会社にとっても有益です。問題は、指示が「一緒に働けそうか見てください」で終わっている点にあります。
この指示だと、面接官は自分の基準で判断するしかありません。ある店長は「素直さ」を最重視し、別の店長は「処方箋枚数への耐性」を見る。どちらも間違いではないのですが、社内で基準が揃っていないと、同じ会社に応募した2人の候補者が別々のものさしで測られます。結果として、通ったはずの人が落ち、合わない人が入ってすぐ辞める。
もうひとつの原因は、合否の決め方が曖昧なことです。面接官が「いい人でした」と報告し、本部が「じゃあ次は社長面接で」と返し、社長のスケジュールが空くのが2週間後——この間に候補者は他社に決まっています。評価のばらつきと選考の遅さは、同じ原因から生まれます。
評価軸は3〜4項目に絞る
評価シートを作ろうとすると、項目が10個以上に膨らみがちです。しかし面接中にメモを取りながら10項目を判断するのは現実的ではありません。現場が使うなら3〜4項目が上限だと考えてください。
項目を決めるときの考え方はシンプルです。「この会社で辞めた人・活躍した人の違いは何だったか」を思い出し、そこから2〜3個を抜き出します。資格保有者を採る場合、スキルの有無より「合うか・続くか」が分かれ目になることが多いためです。
以下は調剤薬局・ドラッグストアでよく使われる軸の例です。自社の言葉に置き換えて使ってください。
| 評価軸 | 何を見るか | 面接での確認方法 |
|---|---|---|
| 業務の想定が合っているか | 在宅、OTC、レジ応援など、実際の業務範囲を理解しているか | 一日の流れを説明し、「この中でやったことがない業務はどれですか」と聞く |
| 環境変化への耐性 | 人数が少ない店舗、異動、繁忙期の波を受け止められるか | 前職で忙しかった時期の具体的な過ごし方を聞く |
| 対人のスタイル | 患者・スタッフとの距離の取り方が店舗の空気と合うか | 苦手だった同僚や患者への対応を、事実ベースで聞く |
| 続ける条件 | 通勤、家庭事情、将来の希望が自社で満たせるか | 転職・就職で優先している条件を順位づけしてもらう |
各項目は「A:問題なし/B:確認が必要/C:合わない」の3段階で十分です。5段階にすると3に集中します。加えて、シートの最後に「Bをつけた理由の事実」を1〜2行書く欄を置きます。印象ではなく、候補者が話した内容をそのまま書いてもらうのがポイントです。
面接官がやりがちな3つの失敗
現場が面接に出るときに起きやすいことを、あらかじめ共有しておきます。
自分の経験談で時間を使い切る。 「私が入った頃は」と語り始めると、面接の半分が会社側の話で終わります。候補者は聞き役に回り、判断材料が集まらないまま終了します。会社説明は資料か別枠に切り出し、面接では聞くことに集中する。目安として、面接官が話す時間は全体の3割程度に抑えます。
条件を口約束する。 「配属は希望どおりにできると思います」「その資格を取れば手当が出るはずです」。現場の面接官は、良い候補者を逃したくない気持ちから条件面で踏み込んでしまうことがあります。しかしその約束が本部の制度と食い違うと、内定後に条件が変わり、辞退や早期離職につながります。給与・配属・勤務時間・手当は「持ち帰って確認します」と答える、と決めておいてください。
逆質問に答えられない。 「有給はどのくらい取れていますか」「産休から戻った方はいますか」といった質問に曖昧な返答をすると、それだけで候補者の評価は下がります。よく出る質問と回答例をA4一枚にまとめ、面接官に事前に渡しておくと防げます。特に中途の薬剤師は複数社を比較していますから、答えの精度がそのまま比較材料になります。条件以外で選ばれる理由づくりについては薬剤師の中途採用で「条件以外の選ばれる理由」をつくる方法も参考にしてください。
判断権限と最終決定者を先に決める
評価シートを整えても、決める人が決まっていなければ選考は止まります。面接の前に、次の3つを文書にしておきます。
| 決めておくこと | 具体例 |
|---|---|
| 各面接官の権限 | 一次面接の店長は「次に進める/進めない」まで判断できる。合否の最終決定はしない |
| 最終決定者 | 常勤薬剤師は役員、パート・登録販売者はエリア長が単独で決定 |
| 決定の期限 | 面接当日中にシート提出、翌営業日中に合否確定、その日のうちに連絡 |
権限を下ろすことに不安があれば、「見送りは現場が単独で判断してよい/採用は最終決定者の確認を要する」という非対称の設計にする方法もあります。見送りの決裁を待つ必要がなくなるだけで、選考のスピードは変わります。
候補者は複数社を並行して受けています。特に人材紹介を通じた中途採用では、返答が遅いと紹介会社側も他案件を優先せざるを得ません。紹介はあるのに決まらないという状態が続いている場合、原因が社内の判断フローにあることは少なくありません(紹介会社から候補者は来るのに決まらない。原因は企業側にあります)。
新卒面接では別の注意が必要
薬学生を面接する場合、評価軸はそのまま使えないことがあります。実務経験がないため「前職での対応」を聞けず、質問が「学生時代に頑張ったこと」に偏りがちだからです。
新卒の場合は、実務実習での経験、研究室での役割、アルバイトでの立ち回りなど、事実として確認できる場面を先に決めておき、そこを掘り下げる形にします。また学生は複数の内定を持ち、入社まで長い期間が空きます。面接官が誰だったかは学生の記憶に残りやすく、面接そのものが口説きの場になる点も、中途とは違うところです。新卒採用全体の進め方は薬局・ドラッグストアが初めて新卒採用を始めるときの進め方で整理しています。
まず一度、シートを回してみる
完璧な評価シートを作ろうとすると、いつまでも運用が始まりません。3〜4項目のシートを1枚作り、次の面接から使ってみる。数回まわしたところで面接官に集まってもらい、「この項目は判断しにくかった」「この質問は使えた」を出し合って直す。この繰り返しのほうが、机上で作り込むより早く形になります。
評価軸の設定は、そもそも「どんな人を採るか」の定義とつながっています。ターゲットが曖昧なまま面接だけ整えても、判断はぶれます。自社の採用基準づくりから面接設計、選考フローの見直しまで、外からの視点を入れて整理したい場合は支援プランをご覧ください。無料相談(約30分〜・オンライン)で、現状の面接体制をうかがったうえで採用設計をご一緒します。