薬科大学・専門学校との接点がない会社が、最初にやること
新卒採用を始めようと決めて、まず近隣の薬科大学に求人票を送ってみた。反応がない、あるいは受理された連絡だけが返ってきて、その後は何も起きない——初めて学校ルートに手をつけた企業から、この話をよく聞きます。求人票を出すこと自体は間違っていません。ただ、それは「学校との接点をつくる作業」ではなく「求人情報を登録する作業」であって、両者は別物です。
この記事では、薬科大学や専門学校とのつながりが今ゼロの会社が、最初の半年で何をどの順番でやるかを整理します。新卒採用全体の進め方は薬局・ドラッグストアが初めて新卒採用を始めるときの進め方で扱っているので、ここでは学校まわりに絞ります。
前提:学校は採用チャネルである前に教育機関
キャリアセンター(就職課)の役割は、学生を企業に送り込むことではなく、学生が納得して進路を決められるよう支援することです。ここを取り違えると、連絡の言葉づかいから噛み合わなくなります。
つまり、学校側にとって価値があるのは「学生の判断材料が増えること」です。求人票は判断材料の一部にすぎません。どんな薬局か、どんな薬剤師が育つのか、卒業生がどう働いているのか。こうした情報を継続的に渡せる企業が、結果として学生に紹介されやすくなります。学校ルートは、営業ではなく情報提供の積み重ねで開くことが多いと考えたほうが、動き方を間違えにくくなります。
最初にやること1:送り先を10校以内に絞る
全国の薬学部・薬科大学に一斉に求人票を送っても、関係は生まれません。最初は数を絞ります。絞り方の軸は3つです。
- 通学圏・出身地の圏内にあるか:自社の店舗網から通える範囲、あるいは学生の出身地としてUターンが見込める地域か
- 募集職種と学校の系統が合っているか:薬剤師なら6年制薬学部、登録販売者候補なら専門学校や大学の他学部、高校も対象になります(薬剤師と登録販売者、新卒採用の進め方はどう違うか)
- すでに接点の芽があるか:在籍している薬剤師の出身校、実務実習を受け入れた実績、取引先の紹介など
このうち3つ目が最も強い入口です。社内に卒業生がいる学校は、最初の連絡が通りやすく、話も具体的になります。まず社員名簿から出身校を洗い出すところから始めてください。
最初にやること2:窓口ごとに役割を分けて理解する
学校側には複数の窓口があり、それぞれ動かせる範囲が違います。全部を一度に狙わず、順番をつけます。
| 窓口 | 主な役割 | 最初の接点として |
|---|---|---|
| キャリアセンター(就職課) | 求人受理、学内説明会の運営、学生への情報提供 | 最初はここ。すべての起点になる |
| 実務実習の担当部署 | 5年次実習の受け入れ先調整 | 受け入れ実績があれば強い接点になる |
| 研究室・ゼミの教員 | 学生の進路相談に日常的に関わる | 距離は近いが、いきなりは難しい |
| 同窓会・卒業生組織 | 卒業生ネットワーク | 自社に卒業生がいる場合に有効 |
キャリアセンターへの最初の連絡では、求人票の送付と併せて「一度ご挨拶に伺いたい」旨を伝えます。訪問時に持っていくのは、求人票と、募集要項に書ききれない情報です。具体的には、1年目の教育スケジュール、配属の決め方、在籍薬剤師の年齢構成と出身校、店舗の処方元の傾向あたりが該当します。「どんな薬剤師が育つ職場か」を説明できる資料が一枚あるだけで、面談の中身が変わります。
最初にやること3:一度きりで終わらせない年間の接点をつくる
学校との関係が続かない最大の理由は、接点が求人票の提出時期だけに集中していることです。年に一度の連絡では、担当者が代わった時点でゼロに戻ります。年間で何をするかを先に決めておきます。
| 時期の目安 | やること | 狙い |
|---|---|---|
| 年度初め | 担当者への挨拶、前年度の採用結果の報告 | 担当交代への対応。関係のリセットを防ぐ |
| 上期 | 求人票の提出、学内説明会・企業研究会への申込 | 学校の募集要領に沿って手続き |
| 実習期間中 | 実習生の受け入れ、指導薬剤師からの状況共有 | 学生と職場が長時間ふれあう機会 |
| 学内イベント期 | 説明会・セミナーへの参加、卒業生の同行 | 学生と直接話す |
| 年度末 | 内定者・入社者の状況報告、翌年度の相談 | 次年度の枠につながる |
学内説明会や企業研究会の申込時期・選定方法は学校ごとに、また年度ごとに変わります。応募多数で抽選や選考になる学校もあるため、各校の最新の実施要領を必ず確認してください。
このカレンダーで重要なのは、年度末の報告です。採用できた/できなかったに関わらず、結果と入社者の様子を伝える企業は多くありません。続ける会社が少ないからこそ、続けるだけで差がつきます。
研究室・教員との接点は、いきなり「学生を紹介してください」から入らない
教員は学生の進路に影響力がありますが、企業から見て一番遠い窓口でもあります。最初の接点は、採用の依頼ではなく実務情報の提供にすることが多いです。地域の在宅医療の状況、扱っている処方の傾向、薬局に求められている機能の変化など、現場でしか持っていない情報には価値があります。
卒業生が在籍しているなら、その社員に同行してもらうのが最短です。「うちの卒業生が働いている会社」という認識ができると、教員が学生に薬局名を挙げる場面が生まれます。
高卒・専門学校ルートは別の枠組みで動く
高校を対象にする場合、大学とはルールがまったく違います。求人はハローワークと学校を経由し、応募段階では一人一社制などの制約が関わります。同じ「学校まわり」でも進め方を分ける必要があるため、高卒採用の「一人一社制」とは。初めての企業がつまずくルールを整理するを先に確認してください。
社内側で決めておくこと
学校との関係は担当者個人につきやすく、その人が異動・退職すると途切れます。最初から次の3点を決めておくと、途切れにくくなります。
- 学校担当を誰にするか(できれば正・副の2名)
- 訪問記録をどこに残すか(担当者名、話した内容、次回の約束)
- 学内説明会や実習に出す社員を誰にするか
学生と話す役は、経営者よりも入社3〜5年目の若手薬剤師のほうが響く場面が多くあります。ただし本人の負担になるので、通常業務との調整を先に済ませてください。
そして、接点をつくった先で内定に至ったら、そこからが本番です。学校ルートは特に、内定辞退が翌年以降の関係に影響します。新卒の内定辞退を防ぐ。内定から入社までのフォロー設計も併せてご覧ください。
学校との接点づくりを、設計から一緒に
学校まわりは、一度動き出せば毎年積み上がる資産になります。一方で、どの学校を選び、いつ何を持って行き、誰が担当するかを最初に決めておかないと、労力だけかかって成果が見えない状態になりがちです。
Talencoでは、対象校の選定から年間の接点計画、説明会での話す内容の整理、実習受け入れと採用のつなぎ方までを一緒に設計します。設計と進行管理をお任せいただき実務は貴社で進める「伴走コンサルティング」と、実務まで一貫してお引き受けする「フルサポート」の2つのプランをご用意しています(詳しくは支援プランをご覧ください)。
まずは無料相談(約30分〜・オンライン)で、現在の状況と来年度の採用目標をお聞かせください。どの学校から手をつけるかの整理から、ご一緒します。