3年先を見て採用計画を立てる。薬剤師が採りにくくなる前提で考える
薬剤師が一人辞めると決まってから求人を出し、紹介会社に連絡し、数ヶ月かけてなんとか埋める。埋まった時点で採用の話は終わり、また次の欠員が出るまで誰も採用の話をしない。多くの薬局・ドラッグストアの採用は、この繰り返しになっています。
ただ、この進め方には前提があります。「次に欠員が出たときも、今と同じくらいの手間と費用で採れる」という前提です。3年後も同じ条件で採れるかどうかは、地域の労働市場と自社の年齢構成を並べてみると見通しが立ちます。この記事では、個別の統計数値を追うのではなく、自社で確認できる情報をもとに中期の必要人数を置く手順を扱います。単年の必要採用数の出し方は毎年何人辞めるかから、毎年何人採るかを決めるで整理しているので、本記事はその先の3年分の話に絞ります。
外部環境は「見る先」を3つ決めれば足りる
採りにくくなるかどうかを判断するために、業界全体の分析は必要ありません。自社が採用活動をする範囲について、次の3つを確認すれば方向感はつかめます。
| 確認するもの | どこで見るか | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 地域の薬剤師の求人倍率 | 厚生労働省が公表する職業紹介の統計(職業別・都道府県別)、管轄の労働局の公表資料 | 自社の商圏が全国平均より厳しいのか緩いのか |
| 近隣の薬学部の入学定員と入学者数 | 各大学が公表する入学者数・定員、文部科学省の学校に関する調査 | 数年後に地元から卒業してくる人数の規模感 |
| 商圏の人口と年齢構成の見通し | 自治体の人口ビジョンや総合戦略、公的機関の地域別将来推計人口 | 処方の需要と、働き手の母数がどちらに動くか |
いずれも公表時期や集計の区分が年度によって変わるため、見るときは最新の資料を確認してください。ここで押さえたいのは数値そのものではなく、自社の商圏がどちらの方向に動いているかという向きです。
たとえば近隣の薬学部の入学者数が定員を下回って続いている地域では、数年後に地元から供給される新卒は今より少なくなる可能性があります。商圏の人口が減る見通しでも、高齢化が進めば処方そのものは減らないことが多く、「患者は減らないが働き手は減る」という組み合わせになりやすい。この向きが分かれば、3年後に今と同じ採り方で埋まるとは考えにくい、という判断ができます。
自社側は3枚の表で3年後を置く
外部環境の向きをつかんだら、自社の数字を並べます。必要なのは次の3つです。
- 3年後の店舗数と、店舗ごとの必要人数
- 在籍者の年齢構成表
- 定年到達者と、ライフイベントで戦力が落ちる見込み
年齢構成表をつくる
全社の在籍薬剤師を、年代と役割で並べます。氏名は不要で、人数だけで構いません。
| 年代 | 管理薬剤師 | 一般薬剤師(常勤) | パート | 3年後の状況 |
|---|---|---|---|---|
| 20代 | 0 | 2 | 0 | 中堅層へ |
| 30代 | 1 | 3 | 1 | 育児期と重なりやすい |
| 40代 | 2 | 1 | 2 | 中核 |
| 50代 | 2 | 0 | 1 | 一部が定年射程に入る |
| 60代以上 | 0 | 0 | 2 | 勤務継続の確認が必要 |
この表をつくると、総数では足りているのに特定の層が薄い、という状態が見えてきます。よくあるのが、管理薬剤師が40代以上に集中していて、20〜30代に候補がいないケースです。この場合、3年後に欠員が出るのは「薬剤師1名」ではなく「管理薬剤師1名」であり、採用と育成の両方で手を打つ必要があります。後任の準備については管理薬剤師の後任を、辞めると言われる前に用意するで扱っています。
3年分の需給を1枚に落とす
年齢構成表ができたら、年度ごとに必要人数と見込み在籍数を並べ、差分を採用必要数とします。
- 必要人数:3年後の店舗数 × 店舗あたりの必要人数(在宅や夜間対応の有無で変わります)
- 見込み在籍数:現在の在籍数 − 定年到達者 − 過去数年の退職実績からの想定離職数
- 採用必要数:必要人数 − 見込み在籍数
退職の想定は、過去2〜3年の実績から平均を置けば十分です。精度の高い予測よりも、毎年ゼロではない前提で数字を入れておくことに意味があります。出店が決まっている場合の必要人数の出し方は、店舗要件から逆算する手順を別記事で整理しています。
3年で考えると、打ち手の順番が変わる
単年の欠員補充では、使える手段が限られます。すぐ動けるチャネルに頼ることになり、結果として紹介経由の比率が上がりやすい。人材紹介は席を埋めるうえで確実性の高いチャネルで、使うべき場面はあります。ただ、3年先まで見える状態なら、時間のかかる打ち手を同時に仕込めます。
| 打ち手 | 効き始めるまでの目安 | 3年計画で置く位置 |
|---|---|---|
| 人材紹介・スカウト | 数週間〜数ヶ月 | 急ぎの欠員と、計画の穴埋め |
| 求人媒体・自社応募の整備 | 数ヶ月 | 毎年の中途採用の土台 |
| 新卒(薬学生)の採用 | 1〜3年 | 3年後の中堅層をつくる |
| 学校との関係づくり | 2〜3年 | 新卒を毎年採れる状態にする |
| 社内の役割の階段づくり | 1〜3年 | 離職を減らし、必要採用数を下げる |
新卒採用と学校開拓は、着手した年に成果が出るものではありません。大学のキャリアセンターや研究室との関係は、1回の訪問で終わらせず年単位で続けることで案内してもらえる状態になります。接点がないところから始める手順は薬科大学・専門学校との接点がない会社が、最初にやることにまとめました。
重要なのは、採用必要数の一部を「3年後に効く手段」に割り当てておくことです。全量を即効性のあるチャネルで埋め続けると、採用単価は下がらず、来年も同じ構造が続きます。
計画は年1回、同じ表を更新する
3年計画は一度つくって終わりではありません。年度末か年度初めに、同じ3枚の表を更新します。見るのは次の点です。
- 想定した退職数と実績がどれだけずれたか(ずれが大きい部署・店舗はどこか)
- 年齢構成表の薄い層が埋まったか、より薄くなったか
- 外部環境の向き(求人倍率、近隣大学の入学者数)が変わっていないか
- 採用チャネルの構成比が、計画した方向に動いたか
ずれた場合に直すのは、採用人数の目標より先に「どのチャネルにどれだけ割り当てるか」です。人数目標を上げても、使える手段が変わらなければ結果は変わりにくい。逆に、想定より離職が少なかった年は、採用を増やすのではなく仕込み側(学校・自社応募)に工数を回せる年と捉えると、翌年以降が楽になります。
なお、3年計画は資料として立派である必要はありません。年齢構成表と需給表の2枚が、経営者と採用担当の間で共有されていれば機能します。兼務で採用を回している会社であれば、年1回まとめて1〜2時間確保するほうが現実的です。
3年分の設計をご一緒します
3年後の必要人数を置く作業は、数字を並べるところまでは自社でできます。難しいのはその先の「どのチャネルに何人を割り当て、いつ動き出すか」という配分と、新卒・学校まわりのように成果が数年後に出る打ち手を途切れさせずに続ける体制です。
Talencoでは、ターゲット設定から年間スケジュール、媒体選定、学校まわりの計画までを設計し、説明会・選考・内定フォロー・入社後の初期定着まで伴走します。支援の形は、設計と実行管理をお任せいただき実務は貴社で進める「伴走コンサルティング」と、実務まで一貫してお引き受けする「フルサポート」の2つです。費用は採用人数・期間・体制によって変わるため、お話を伺ってお見積りします。
詳しくは支援プランをご覧ください。まずは無料相談(約30分〜・オンライン)で、3年先を見た採用設計をご一緒します。年齢構成表や過去の退職実績が手元にあれば、その場で論点を整理できます。