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毎年何人辞めるかから、毎年何人採るかを決める

「今年は何人採りますか」と聞かれて、すぐに答えられる薬局・ドラッグストアは多くありません。出店の予定があれば「新店に2人」と言えますが、出店計画がない年は「特に決めていない。欠員が出たら考える」となりがちです。

ところが実際には、出店がなくても人は辞めます。結婚、転居、出産、介護、定年、そして単なる転職。毎年ある程度の割合で席が空き、そのたびに慌てて求人を出し、紹介会社に連絡し、数ヶ月の欠員期間を店舗が背負う。この繰り返しから抜けるには、「何人辞めるか」を先に数えて、「何人採るか」を年の頭に決めてしまうやり方に変える必要があります。

欠員が出てから動くと、なぜ間に合わないのか

薬剤師の退職は、申し出から退職日まで1〜2ヶ月ということが多いものです。一方、募集を出してから入社に至るまでは、書類選考・面接・内定・退職交渉・引き継ぎと積み上がり、数ヶ月かかることが珍しくありません。つまり、辞めると言われてから動き始めた時点で、欠員期間が発生することはほぼ確定します。

この構造は、採用チャネルを変えても大きくは変わりません。紹介会社に依頼すれば候補者は早く出てくることがありますが、その候補者も在職中であれば退職交渉が必要です。採用を速くするより、空く前から採り始めるほうが、現場の負荷は下がります。

出店に紐づく採用の逆算は出店計画から採用人数を逆算する。ドラッグストアの採用計画のつくり方で扱っています。この記事は、出店がない前提で、既存店を維持するために毎年いくつ席が空くかを数える話です。

ステップ1:各店舗の定員を紙に書く

最初にやるのは、店舗ごとの「必要人数」を明文化することです。今いる人数ではなく、その店舗がまともに回るために要る人数を書きます。処方箋枚数、開局時間、在宅の件数、休日の取らせ方から決めます。

下の表は自社で埋める前提の枠です。数字は入れていません。

店舗常勤薬剤師(必要)パート薬剤師(常勤換算)事務現在の在籍過不足
A店
B店
C店
合計

ここで多いのが、「今の人数=定員」と書いてしまうケースです。すでに管理薬剤師が月に何日も連勤している、有休が消化できていない、在宅を断っているという状態なら、それは定員を満たしていない状態です。現時点で不足している分は、この後の計算とは別に、今年の採用数に足す必要があります。

パート薬剤師は人数ではなく常勤換算(週の勤務時間の合計を常勤1名分で割った数)で数えると、常勤の欠員と足し引きできます。時間の刻み方についてはパート薬剤師が集まる募集条件のつくり方。時間の切り方で応募数が変わるを参照してください。

ステップ2:過去3年の退職者を、種類を分けて数える

次に、過去3年間に辞めた人を数えます。まとめて「3年で7人」と数えても使えません。属性ごとに分けて数えると、来年の予測に使える形になります。

分ける軸は3つです。

区分1年目2年目3年目3年平均
常勤薬剤師(中途入社)
常勤薬剤師(新卒入社・3年以内)
パート薬剤師
事務・登録販売者
合計(常勤換算)

新卒入社者の早期退職を中途と分けるのは、性質が違うからです。新卒が入社1〜3年で抜けるのは受け入れ設計の問題であることが多く、採用数を増やして埋める話ではありません。パートも同様で、常勤の離職とは理由も対処も別になります。

3年分を並べると、年による振れ幅が見えます。平均が2名でも、1名の年と4名の年があるなら、その振れ幅自体が計画の前提です。平均だけでなく、最も多かった年の数字も並べて見ておくと、判断がぶれにくくなります。

退職理由の中身を採用要件に反映させる手順は辞めた薬剤師の退職理由から、採用要件を書き換えるにまとめています。この記事で必要なのは人数だけですが、理由を並べる作業は同時にやっておくと無駄がありません。

ステップ3:予見できる欠員を織り込む

過去の平均に加えて、来年すでに分かっている欠員を足します。以下は年の初めに拾っておきたい項目です。

  • 定年到達者と、再雇用を打診するかどうか
  • 産休・育休の予定と、復帰予定時期
  • 介護や配偶者の転勤など、本人から相談を受けている事情
  • 管理薬剤師の異動や昇格による、元の席の空き
  • 60歳以降のスタッフの勤務日数の変更希望

このうち定年は日付が確定しているので、最も計画に載せやすい欠員です。産休・育休は復帰時期が動くことが多く、「復帰する前提で数えない」か「時短復帰として常勤0.6程度で数える」といった置き方を先に決めておきます。代替と復帰の組み方は産休・育休に入る薬剤師が出たとき、代替と復帰をどう組むかで整理しています。

ステップ4:余力を1名分持つかどうかを決める

ここまでで、次の式が組めます。

年間必要採用数 = 現時点の不足 + 過去3年の平均退職数 + 来年予見できる欠員 + 余力

最後の「余力」を持つかどうかが、経営判断になります。薬剤師の採用は計画どおりに進まないことが多く、予定した時期に人が採れない前提を置くなら、定員より1名多い状態を目標にするという考え方があります。

余力を持たない常勤1名分の余力を持つ
人件費定員どおりで抑えられる1名分が先に出る
欠員が出たとき発生から数ヶ月、現場が吸収内部の配置換えで凌げる
採用の進め方空いてから募集開始通年で募集を出し続けられる
管理薬剤師の負荷欠員のたびに集中する平準化しやすい

どちらが正しいということはありません。店舗数が少ないほど1名の欠員の影響が大きく、余力の価値は上がります。逆に、パート薬剤師の層が厚く短期的にシフトを厚くできるなら、常勤の余力を持たない選択もあります。判断する前に、欠員1ヶ月あたりのコストを概算しておくと比較しやすくなります。考え方は薬剤師1人を採るのにいくらかけていいか。採用単価の考え方にまとめました。

出した数字を、年間スケジュールに割り付ける

年間必要採用数が出たら、それを「いつ、どのチャネルで」に割り付けます。ここで新卒と中途の役割が分かれます。

中途は欠員の発生に合わせて動かす枠、新卒は数年先の定員を支える枠です。新卒を毎年1名でも採り続ける会社は、3年経つと若手の層ができ、中途で埋める必要が減っていきます。ただし新卒は内定から入社まで時間がかかるため、来年の欠員には間に合いません。この時間差を踏まえて、中途で埋める人数と新卒で仕込む人数を分けて置きます。

新卒側の人数から母集団を設計する手順は新卒採用の数値逆算。目標入社数から母集団を設計する方法に譲ります。

「欠員が出たら動く」から「毎年決まった数を採る」へ

年間必要採用数を紙に書くと、変わることが3つあります。ひとつは、求人の掲載を止めなくなること。ふたつめは、紹介会社への依頼が単発ではなく年間の依頼になり、こちらの要件が相手に蓄積されること。みっつめは、採用にかける予算を年度の初めに確保できるようになることです。

数字そのものは、初年度は粗くて構いません。過去3年の退職者数と定員が埋まれば、来年の判断の土台としては足ります。翌年に実績と突き合わせて精度を上げていく前提で、まず一度出してみることをおすすめします。

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