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薬局の実務実習受け入れは、新卒採用にどうつながるか

実務実習の受け入れは、多くの薬局にとって「地域の教育機関への協力」として位置づけられています。指導薬剤師が資格を取り、大学や調整機構からの依頼に応じて学生を受け入れる。11週間が終われば報告書を出して、そこで関係が終わる。これはこれで誠実な向き合い方です。

ただ、同じ会社が別のところで「薬学生と接点がない」「説明会に人が来ない」と悩んでいることがあります。年に数人、11週間にわたって自社の店舗で働き、社員と同じ空気を吸っている薬学生がいるのに、その存在が採用の設計に一度も出てこない。この記事では、実習を採用活動に変えるのではなく、教育を教育として真っ当にやったうえで、その結果が採用にどうつながるのかを整理します。

まず、実習は選考の場ではないという前提を置く

実務実習は薬学教育の一環として制度化されたもので、目的は学生が薬剤師業務を実地で学ぶことにあります。受け入れ薬局には認定実務実習指導薬剤師の配置など要件があり、学生の配属は大学や地区の調整機構を通じて決まるのが一般的です。期間の区分や必要な要件は年度によって変わることがあるため、最新の実務実習要領や所属地区の案内を必ず確認してください。

ここで押さえておきたいのは、実習期間中に選考めいたことをしないという線引きです。実習の評価と採用の評価を混ぜると、学生は指導を「見られている」と受け取り、質問しにくくなります。大学側との信頼にも関わります。実習中にやるのは教育だけ。採用につながるのは、その教育の質そのものです。

学生が実習中に見ているもの

学生は11週間、店舗の日常を至近距離で見ます。求人票や説明会では絶対に伝わらない情報が、黙っていても伝わります。

学生が見ている場面そこから伝わってしまうこと
忙しい時間帯の社員同士の会話人間関係、質問できる空気があるか
疑問を投げたときの返答の速さ教育に時間を割く会社かどうか
在宅・かかりつけ・OTC対応の有無薬剤師としての仕事の広がり
有給や休憩の取られ方働き続けられる職場かどうか
管理薬剤師の忙しさ数年後の自分の姿

学生は実習先を「就職先候補」として見ているとは限りません。しかし友人には話します。同じ大学の後輩にも伝わります。実習の受け入れは、狭いけれど確実に届く口コミのチャネルでもあります。だからこそ、実習中の関わり方は採用広報の一部として設計する価値があります。

受け入れ体制で差がつく場面

同じ11週間でも、設計の有無で学生の記憶に残るものが変わります。

場面よくある状態設計したい状態
初日指導薬剤師が挨拶し、すぐ調剤室へ会社の成り立ち・地域での役割を15分説明する
週の区切り特に振り返りなし週1回15分、指導薬剤師と振り返りの時間を固定する
疑問への対応手が空いたときに答える「質問はメモして夕方まとめて聞く」など運用を決める
若手社員との接点自然発生に任せる入社2〜3年目の社員と話す時間を意図的につくる
最終日報告書を書いて終了何ができるようになったかを言葉で返す

特に効くのは、入社数年目の社員と話す時間です。指導薬剤師はベテランであることが多く、学生から見ると距離があります。数年後の自分に近い社員が「入社してから何を任され、何に困ったか」を話すほうが、会社の実像は伝わります。これは説明会で企業が語る言葉より信頼されやすい情報です。

実習の時期と、採用活動の時期は分けて考える

薬学部6年制では実習の時期と就職活動の時期が学年をまたいで動きます。実習を受け入れた学生に採用の話をするタイミングは、実習期間中ではなく、実習が終わってから、かつ学生が就職活動を意識し始める頃です。学事全体の流れと採用活動の重ね方は薬学生の新卒採用スケジュール。6年制の学事と採用活動の重ね方で整理しています。

実習後のつなぎ方として現実的なのは、次のような順序です。

  1. 実習終了時に、学生の希望があれば会社の採用情報の受け取り方(メールマガジン、説明会案内など)を案内する
  2. 説明会や見学会の案内を、実習受け入れ実績のある大学へ通常のルートで送る
  3. 実習を担当した指導薬剤師の名前を案内文に添える

3つ目は小さなことに見えますが、学生にとって「知っている人がいる会社」は説明会への心理的なハードルが大きく下がります。無名の中小薬局が薬学生と接点を持つ手段として、実習は最も自然な入口の一つです。

受け入れ側の負担を、先に見積もる

実習を採用の観点で語ると「もっと丁寧にやろう」という話になりがちですが、現場の負担は実在します。指導薬剤師は通常業務を抱えながら学生を見ています。ここを軽く見ると、受け入れ自体が続きません。

先に決めておきたいのは次の3点です。

  • 指導に充てる時間を、シフト上どう確保するか(週◯時間を業務として計上する)
  • 指導薬剤師以外の社員が、どの場面で関わるか
  • 実習期間中の店舗の人員に、余裕をつくれるか

管理薬剤師が一人で店舗を回している状態では、実習の受け入れも採用も苦しくなります。人員配置の余白の話は管理薬剤師の後任を、辞めると言われる前に用意するでも触れています。

実習は「採用の入口の一つ」であって、全部ではない

実習受け入れは年に数人が上限で、そこから入社に至る人数はさらに限られます。実習だけで採用計画は埋まりません。媒体、学校への訪問、人材紹介会社など複数のチャネルを組み合わせたうえで、実習は「深いけれど細い線」として位置づけるのが実態に合っています。

初めて新卒採用に取り組む場合は、全体の設計を先に立ててから実習の位置づけを決めるほうが迷いにくくなります。順番は薬局・ドラッグストアが初めて新卒採用を始めるときの進め方にまとめています。

実習の受け入れ体制を採用の観点で見直したい、あるいは大学との関係を採用にどうつなぐか整理したい場合は、支援プランをご覧ください。年間のスケジュール設計から学校まわりの計画まで、無料相談(約30分〜・オンライン)で採用設計をご一緒します。

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