国家試験に落ちた学生・既卒の受験者を採用ターゲットにする
新卒採用の年間計画を引き、説明会を開き、大学まわりをしても、中小の薬局・ドラッグストアが現役の6年生から採れる人数には限りがあります。一方で、毎年一定数、国家試験に合格できずに卒業していく人と、卒業試験や留年で1年遅れる学生がいます。この層に向けて募集をかけている企業は、現役生向けの採用に比べると多くありません。
ここで扱うのは「妥協して人数を埋める」話ではありません。回り道をした人は、薬剤師を目指す理由を一度自分で問い直しています。受け入れる側が条件と社内の説明を先に整えておけば、定着しやすい採用になることがあります。整えずに採ると、現場が戸惑い、本人も宙ぶらりんになります。この記事では、その準備の順番を整理します。
誰を指しているのか、3つに分けて考える
「国試浪人」とひとくくりにすると打ち手が決まりません。置かれた状況が違うので、接点の作り方も、出せる条件も変わります。
| 区分 | 状況 | 会社が接点を持てる時期 | 提示しやすい形 |
|---|---|---|---|
| 既卒再受験者 | 卒業済み。学籍がなく、大学の就職支援からは外れがち | 合格発表後、および次年度の試験までの通年 | 勉強と両立する有期・パート勤務+合格後の正社員化 |
| 卒業延期・留年中の学生 | 在学中。翌年度に卒業・受験予定 | 学年が確定する春以降 | 翌年入社を前提とした内定・アルバイト |
| 内定を出したが不合格だった人 | 自社が既に接点を持っている | 合格発表直後 | 入社延期か、別形態での受け入れ |
3つ目は自社の中にすでにいます。前年の内定者が不合格だった場合の扱いをその場で決めると、当事者にとっても会社にとっても後味が悪くなりがちです。内定を出す段階で不合格時の扱いを決めておく考え方は、薬剤師の内定辞退はなぜ起きるのか。国家試験までの長い期間のフォロー設計で扱っています。
既卒者にはどこで会えるのか
在学生と違い、既卒者は学内の合同説明会にも掲示板にも現れません。探す場所が変わります。
大学側は、卒業後も国家試験の受験を続ける卒業生に対して、補講や模試、相談窓口を用意していることがあります。名称や運用は大学ごとに異なるため、キャリアセンターに問い合わせ、「卒業生・既卒受験者に求人情報を案内してもらえるか」を個別に確認するのが現実的です。在学生向けの求人票とは扱いが別になっている場合があります。大学との最初の接点づくりそのものに不安がある場合は、薬科大学・専門学校との接点がない会社が、最初にやることを先に読んでください。
もう一つが、国家試験対策の予備校・講座です。受講生向けの求人掲示や提携先の案内を行っているところがあり、スポンサー枠や説明会の形で接点を持てる場合があります。ただし費用や条件は各社で異なるため、営業担当に「掲示だけか、受講生に直接届くのか」「届く人数と時期」を確認したうえで判断してください。
このほか、求人媒体やハローワークの募集文に「国家試験の再受験を予定している方も応募可」と一行入れておくだけでも、検索して探している人には届きます。実務実習を受け入れた学生が、その後どうなったかを把握している薬局も、接点を持ちやすい立場にあります。
動く時期は合格発表の前後に集中する
国家試験は例年冬に実施され、合格発表は春先です。日程は年度により変わるため、最新の実施要領を必ず確認してください。この層の採用は、通年でだらだら募集するより、発表前後の短い期間に集中させたほうが動きます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 試験の数ヶ月前 | 大学・予備校への案内依頼。募集文に再受験者可の一行を入れる |
| 合格発表の直前 | 不合格だった場合の受け入れ条件を社内で確定。内定者への連絡文面を用意 |
| 合格発表の直後〜数週間 | 応募受付と面談。既卒者は進路の決定が急ぎになりやすいので、選考日数を詰める |
| 春〜初夏 | 勤務開始と学習計画のすり合わせ。模試の日程を共有 |
| 秋〜冬 | 試験直前のシフト縮小。翌年の入社条件を再確認 |
発表直後は、本人が進路を切り替える判断をしている時期です。ここで返信が数日空くと接点が切れます。選考の日数設計は選考スピードを設計する。薬剤師の中途採用で条件を変えずに歩留まりを上げるの考え方がそのまま使えます。
勉強と両立できる勤務形態を、先に紙にする
「働きながら勉強してもらう」と口で言うだけでは応募になりません。本人が知りたいのは、週に何日働くのか、直前期に休めるのか、模試の日はどうなるのかという具体です。
決めておきたいのは次の点です。週あたりの上限勤務日数・時間、試験直前期(何ヶ月前からか)のシフト縮小の可否、模試や講座と重なる日の扱い、勤務地と自宅・予備校の距離、そして給与と社会保険の扱い。上限を会社側から提示するほうが、本人が遠慮して働きすぎる事態を防げます。
もう一点、免許を持たない期間にどの業務を任せるかの線引きは、法令上の制約を踏まえて社内で確認してください。調剤に関わる行為は薬剤師でなければできないものがあり、任せられる範囲を曖昧にしたまま現場に出すと、指導する側も困ります。時間の刻み方や条件文の書き方はパート薬剤師が集まる募集条件のつくり方。時間の切り方で応募数が変わるが参考になります。
合格を前提に内定を出すなら、条件は書面で
翌年の合格を前提に内定を出す場合、口頭の約束だけで進めると、結果が出た後に解釈が割れます。次の項目は文面に落としておくと安全です。
- 合格した場合の入社日、雇用形態、給与(在学・受験期間中の条件と分けて書く)
- 不合格だった場合の扱い(現在の雇用を継続するか、期間を区切るか、何回まで支援するか)
- 合格発表後、いつまでに本人が意思を伝えるか
- 受験費用・講座費用を会社が負担する場合、その範囲と、退職時の扱い
費用を会社が負担する制度をつくる場合は、返還条項の設計が論点になります。奨学金返済支援と同様に、勤続年数との紐付けや途中退職時の扱いを決めずに始めると、後から揉める火種になりやすい領域です。社内で決めきれない場合は、社会保険労務士など専門家への確認を挟んでください。
社内の説明を揃えておく
この採用でつまずきやすいのは、実は現場の受け止め方です。「なぜ免許のない人を入れるのか」「現役で受かった同期と扱いが違うのはなぜか」という問いが必ず出ます。答えを用意しないまま配属すると、本人が居づらくなります。
会社として言語化しておきたいのは、この採用を人数合わせではなく育成投資として位置づけていること、合格後の処遇は他の新卒とどう揃える(または揃えない)のか、そして受け入れ店舗に何をお願いするのかの3点です。回り道をした人を採る会社だという説明が社内で一致していれば、現場は支援する側に回りやすくなります。受け入れ後の立ち上がりについては入社3ヶ月で辞められる薬局。最初の90日にやることを決めておくの考え方を、免許取得前の期間にも当てはめて設計すると整理しやすくなります。
まず、今年の発表日から逆算する
この層を狙うかどうかは、来年の合格発表までに社内の条件を決めきれるかで決まります。決めるのは、接点をどこに取りに行くか、勤務形態の上限、不合格時の扱い、社内への説明。この4つが揃えば、発表直後の短い期間に動けます。
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