高校訪問はいつ誰が行くか。求人票を出しただけで終わらせない
ハローワークに求人を申し込み、近隣の高校に求人票を送付した。それなのに応募が一件も来ない——高卒採用を始めた薬局・ドラッグストアからよく聞く話です。高卒採用は求人票が学校を経由して生徒に届く仕組みのため、学校側が「この求人を生徒に案内しよう」と判断しなければ、そもそも存在を知られないまま年度が終わります。
そのつなぎ目を埋めるのが高校訪問です。ここでは制度の解説ではなく、誰が・いつ・どこへ行き、何を話して何を置いてくるかという実務に絞って整理します。一人一社制など高卒採用の枠組み自体は高卒採用の「一人一社制」とは。初めての企業がつまずくルールを整理するで扱っているため、本記事では前提として短く触れるにとどめます。
求人票は「届く」が「見られる」とは限らない
高校の進路指導室には、多い学校で年間数百社の求人票が集まります。生徒が自分で全てを読むことは少なく、進路指導の先生が生徒の希望や適性を踏まえて数社を提示する流れが一般的です。つまり求人票は、生徒ではなくまず先生に読まれる書類だと考えたほうが実態に近くなります。
先生の立場からすると、名前を知らない企業の求人票を生徒に勧めるのはリスクがあります。就職後に早期離職が起きれば、翌年以降の生徒の進路にも影響するためです。訪問の目的は売り込みではなく、「この会社は生徒を任せても大丈夫か」という先生の判断材料を渡すことにあります。
訪問先をどう選ぶか
すべての高校を回るのは現実的ではありません。次の3つの軸で候補を絞ると、限られた時間を配分しやすくなります。
| 軸 | 見るポイント | 優先度の考え方 |
|---|---|---|
| 商圏との距離 | 店舗から通勤可能な範囲か。生徒の自宅から通える公共交通があるか | 通勤が現実的でない学校は、内定まで進んでも辞退になりやすい |
| 学科・進路傾向 | 就職者を毎年一定数出しているか。商業科・総合学科・普通科の就職コースなど | 進学率が極めて高い学校は、就職求人の優先度が下がることが多い |
| 過去の接点 | 過去に応募・入社実績があるか。在籍社員の出身校か | 既に接点がある学校は、初回訪問のハードルが下がる |
初年度は10〜15校程度に絞り、翌年以降に反応のあった学校へ厚く配分していく組み立てが現実的です。在籍社員の出身校は見落とされがちですが、「卒業生が働いている」という事実は先生にとって最も具体的な情報になります。
いつ行くか、誰が行くか
高卒採用は行政・学校・関係団体の申し合わせによって、求人申込みの受付開始日、学校への求人提出・訪問が可能になる日、応募開始日、選考開始日が年度ごとに定められています。日付は年度によって変わるため、必ずその年の実施要領を確認してください。そのうえで、年間の動きは概ね次のように整理できます。
| 時期 | やること | 補足 |
|---|---|---|
| 春(求人受付開始前) | 訪問先リストの作成、求人票の内容確定、持参資料の準備 | この時期に準備が終わっていないと訪問解禁後に動けない |
| 求人票の学校提出が可能になる時期 | 一次訪問。求人票の持参と会社説明 | 解禁直後は各社が集中するため、アポは早めに |
| 夏(生徒の応募先検討期) | 職場見学の受け入れ、必要に応じて二次訪問 | 見学の受け入れ可否は一次訪問時に伝えておく |
| 秋(応募・選考期) | 選考、結果連絡 | 学校への連絡期限を守ることが翌年の信頼につながる |
| 冬〜年度末 | 内定者フォロー、訪問記録の振り返り | 次年度の訪問先を決める材料になる |
訪問者は、可能であれば採用の決定権に近い人と、配属先の現場責任者の2名が望ましいところです。人事担当だけで行くと「実際にどんな職場か」の質問に答えきれず、店長だけで行くと待遇や配属の確約ができません。1名で行く場合は、その場で答えられない質問を持ち帰り、期限を決めて回答する姿勢を示します。
アポイントは電話で取るのが一般的です。「進路指導のご担当の先生」を指名し、求人票を持参したい旨と所要時間(15〜20分程度)を先に伝えます。学校は授業時間中に応対できないため、放課後や特定の曜日に限定されることもあります。指定された時間に合わせる前提で調整してください。
15分で何を話すか
短時間で伝える内容は、あらかじめ型を決めておきます。順番は次の通りです。
- 会社の概要(店舗数、エリア、事業の中身を1分)
- 募集職種と、入社後1年目に何をするか
- 資格取得(登録販売者)の支援体制と、受験までの見通し
- 勤務地・シフト・休日の実際
- 高卒入社者の受け入れ実績と、指導担当の有無
- 職場見学の受け入れ可否と日程
先生が知りたいのは、待遇の良さより「生徒が続けられるか」です。特に3と5は具体的に話せるよう準備してください。登録販売者は実務経験の要件が関わる資格のため、入社後どのような順序で経験を積ませるのかを説明できると、先生も生徒に案内しやすくなります。資格取得までの流れは登録販売者を高卒採用で確保する。一人一社制のルールと進め方で整理しています。
持参物は、求人票のほかに会社案内1〜2枚、職場の様子がわかる写真、職場見学の案内文の3点があれば足ります。分厚い資料は保管されません。1〜2枚に情報を収める考え方は大学向けの資料づくりと共通する部分があり、薬科大学・専門学校との接点がない会社が、最初にやることも参考になります。
生徒に届く形で置いてもらう
訪問の最後に、置いていく資料をどう扱ってもらいたいかを言葉にして依頼します。「求人票と一緒にファイルに綴じていただけますか」「もし興味を持った生徒さんがいたら、職場見学は随時受け付けています」と具体的に伝えるだけで、扱いが変わることがあります。
依頼するときのポイントは、先生の手間を増やさないことです。掲示用に1枚もので完結する資料を用意する、見学申込みの連絡先と担当者名を明記する、日程調整の幅を広く示す。この3点があれば、先生は生徒に渡すだけで済みます。
一度で応募が出る前提を捨てる
初回訪問の年に応募が来る学校は多くありません。高卒採用は学校との関係が数年かけて育つ性質があり、2年目・3年目の訪問で初めて生徒を紹介されるケースもあります。そのため、訪問した事実を記録に残し、翌年に引き継げる形にしておくことが重要です。
記録に残す項目は次の通りです。
- 訪問日、訪問者、面会した先生の氏名と役職
- 学校の就職者数の傾向、過去に薬局・ドラッグストアへの就職実績があるか
- 先生から出た質問と、その場で答えられなかった内容
- 次年度の訪問時期の希望や、学校側の内部行事の都合
- 職場見学・学内説明会の可否についての反応
この記録がないと、担当者が変わるたびに一からやり直しになります。学校側も担当の先生が異動することがあるため、個人ではなく会社として関係を積み上げる意識が要ります。採用担当が店舗運営と兼務の場合は、記録のフォーマットを先に決めておくと運用が続きやすくなります(採用担当が兼務の薬局で、採用業務を止めずに回す体制)。
訪問を年間計画に組み込む
高校訪問は、思い立ったときに行っても効果が出にくい活動です。求人票の準備、訪問時期、職場見学の受け入れ体制、選考の日程が一本の線でつながっていて初めて、先生が生徒に案内できる状態になります。
Talencoでは、高卒・大卒の両方に対応した採用計画の設計から、学校まわりの訪問先リストづくり、持参資料の作成、選考・内定フォロー・入社後の初期定着までを伴走してご支援しています。設計と実行管理をご一緒する「伴走コンサルティング」と、実務まで一貫して対応する「フルサポート」の2つのプランをご用意しています(支援プラン)。
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