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母集団形成・訴求

入社祝い金を出すべきか。紹介手数料と比べて考える

求人を出しても薬剤師の応募が来ない。紹介会社に依頼すると手数料が重い。そんな状況で「入社祝い金を出せば自社応募が増えるのではないか」という案が出てくることがあります。競合の求人に「入社支度金あり」と書かれているのを見て、気になっている方もいるでしょう。

結論から言えば、入社祝い金は使える手ですが、条件を決めずに出すと後で回収できない支出になりやすい制度です。この記事では、祝い金を紹介手数料と同じ原資から出すものとして捉え直したうえで、副作用と、出すなら先に決めておく条件を整理します。

祝い金と紹介手数料は、同じ財布から出ている

入社祝い金を「新しい出費」と考えると判断が止まります。実際には、紹介会社経由で1名採用したときに支払う手数料も、自社応募を増やすために候補者へ渡す祝い金も、採用にかけられる年間予算という同じ財布から出ています。

違うのは、お金が誰に渡るか、そしていつ確定するかです。

紹介手数料入社祝い金
支払先人材紹介会社入社した本人
発生する条件入社が成立したとき自社で定めた支給条件を満たしたとき
金額の決まり方契約の料率と理論年収自社で設計できる
支払わずに済む場合紹介経由で採らなければ発生しない支給条件に届かなければ発生しない
返金・返還契約の返還規定による自社の規程の設計による

この表で押さえたいのは、祝い金は自社で設計できる余地が大きいという点です。紹介会社の手数料率は交渉の幅が限られますが、祝い金は支給時期も条件も自社で決められます。だからこそ、設計を省略すると悪いほうに転びます。

なお、紹介会社は「手数料が高いから切る相手」ではなく、席を早く埋めるチャネルとして有効なパートナーです。祝い金は紹介の代わりではなく、自社応募という別の入口を太くするための手段として位置づけるのが現実的です。採用にかけられる上限そのものの考え方は薬剤師1人を採るのにいくらかけていいか。採用単価の考え方で整理しています。

出す前に想定しておく三つの副作用

金銭を主目的にした応募が増える

祝い金を前面に出した求人は、仕事内容や働き方より金額で比較される傾向があります。応募数という数字は動いても、面接で志望動機が曖昧だったり、入社後に「もっと出す会社があった」と離れたりすることがあります。

母集団の「数」が増えることと、自社に合う人が増えることは別です。応募は来るのに決まらない状態が続くなら、祝い金より先に求人票の中身や選考の進め方を見直したほうが効くこともあります。

既存社員との不公平が生じる

同じ店舗で同じ仕事をしている社員が、あとから入った人だけ祝い金を受け取ったと知ったとき、何が起きるか。これは中途の給与提示で逆転が起きるときと同じ構図です。祝い金は「新しく入る人だけに払う金銭」である以上、在籍者への説明をセットで用意していないと、採用のために定着を崩す結果になりがちです。

対応としては、既存社員に向けたリファラル報奨や、勤続に応じた手当とあわせて制度全体を見せる方法があります。社内の公平性の考え方は中途薬剤師に高く出すと、既存社員が辞める。給与の内部公平性をどう保つかも参考にしてください。

早期に辞められると回収できない

一括で入社時に支給し、3ヶ月で退職された場合、支出だけが残ります。紹介手数料には早期退職時の返還規定が付いていることが多い一方、祝い金は自社で規程を作らない限り戻ってきません。ここが設計を省けない最大の理由です。

出すと決めたら、先に文書化する4点

支給を決めた場合、募集を出す前に次の4点を規程として文章にしておきます。曖昧なまま口頭で伝えると、支給時期をめぐるトラブルになりやすくなります。

決める論点考え方
支給の分割入社時に全額ではなく、入社時・半年後・1年後などに分ける。在籍し続けたことに対して払う形にする
在籍条件「支給日時点で在籍していること」を条件として明記する。休職中の扱いも決めておく
対象者の範囲常勤のみか、パートも含むか。紹介会社経由の入社者を対象にするか(契約上の扱いを紹介会社に確認)
求人票での表記賃金欄に含めず、別項目として金額と支給条件・分割回数を併記する

分割支給にすると、早期退職による取りこぼしは小さくなります。一方で「入社時にまとまった金額が入る」という訴求力は弱まります。どちらを取るかは、欠員の緊急度と、過去の早期離職の実績から判断します。

返還規定については注意が必要です。労働基準法には、労働契約の不履行について違約金や損害賠償額をあらかじめ定めることを禁じる規定があり、「1年以内に辞めたら全額返還」といった書き方は、設計によっては問題になる場合があります。奨学金返済支援や引越し費用の返還条項でも同じ論点が出てきます。実務上は返還を前提にするより、分割支給と在籍条件で組み立てるほうが設計しやすく、制度化の前に社会保険労務士や弁護士に条文を確認してもらうことをおすすめします。考え方の近い制度として奨学金返済支援を薬学生の採用に使うとき、先に決めておく条件もあわせてご覧ください。

出さない代わりに、入社直後の負担を減らす

祝い金の訴求力の正体は、多くの場合「入社直後にお金が要るのに、初任給までは収入がない」という不安への対応です。だとすれば、現金の一括支給以外にも打ち手があります。

  • 給与の締めと支払日を明示し、初回支給日がいつになるかを面接時点で伝える
  • 転居を伴う場合の引越し費用や、借上社宅の初期費用の会社負担
  • 制服・備品・研修費用など、入社時に本人が立て替える費用をなくす
  • 駐車場代や通勤手当の支給開始時期を初月から適用する
  • 有給休暇の付与を法定より前倒しする(制度変更になるため既存社員にも適用)

これらは既存社員にも同じ条件で適用できるものが多く、不公平感が生じにくいという利点があります。「新しい人にだけ払う」のか「入社直後の負担そのものを減らす」のかで、社内への波及がまったく違います。

どちらを選ぶにせよ、判断の順番は同じです。まず年間の採用予算と必要採用数を置き、紹介・媒体・祝い金のような訴求施策に、それぞれいくらまで配分できるかを決める。そのうえで、祝い金が自社応募を増やす手段として割に合うかを見ます。予算を先に枠で切る方法は年間の採用予算をどう配分するか。紹介手数料に全部食われる前にで整理しています。

まとめ

入社祝い金は、出すこと自体が良い悪いという話ではありません。紹介手数料と同じ財布から出る支出として、分割支給・在籍条件・対象範囲・求人票の表記を先に文書化できているかどうかで、結果が分かれます。設計を省くと、金銭目的の応募、既存社員の不満、回収できない支出という三つが同時に起きることがあります。

祝い金を出すべきかどうかは、自社の採用単価、紹介への依存度、過去の早期離職の状況によって答えが変わります。Talencoでは、採用チャネルの構成から訴求の設計、入社後の定着までを通して伴走しています。支援の範囲は支援プランをご覧ください。まずは無料相談(約30分〜・オンライン)で、採用設計をご一緒するところから始めていただけます。

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