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薬局・ドラッグストアで障害者雇用を進める。職務の切り出しから考える

障害者雇用について、行政からの書面や社会保険労務士からの指摘で初めて具体的に考え始めた、という薬局・ドラッグストアは少なくありません。そのとき多くの場合、「何人採らなければいけないのか」という人数の話から入ります。ただ、人数だけを先に決めて募集を出しても、受け入れる側で任せる仕事が決まっていないと、入社後に本人も現場も困ることになります。

この記事では、障害者雇用を採用の問題ではなく職務設計の問題として扱います。店舗業務のどこを切り出せるか、任せる範囲をどう決めるか、どのルートで人と出会うか。順番に整理していきます。

まず枠組みを確認する(数値は最新の行政資料で)

障害者の雇用は、障害者雇用促進法という法律で枠組みが定められています。一定規模以上の事業主には、常用労働者数に対して一定割合以上の障害者を雇用する義務(法定雇用率)があり、対象となる事業主はハローワークへの年1回の報告も求められます。基準を下回る場合には納付金の仕組みが関係することもあります。

ここで重要なのは、法定雇用率も対象となる事業主の規模も、段階的に引き上げられてきた経緯があり、年度によって変わりうるという点です。自社が対象かどうか、何人が必要かは、厚生労働省や管轄のハローワークが公表している最新の資料で必ず確認してください。この記事では具体的な数値には触れません。

そして実務として言えるのは、率を満たすことをゴールにすると、採用しても続かない形になりやすいということです。数を合わせるためだけに採った結果、任せる仕事が決まらず本人が手持ち無沙汰になり、数ヶ月で退職するという流れは、業種を問わず起こります。先に考えるべきは「どの仕事を、誰が、どう教えるか」です。

店舗業務のどこを切り出せるか

薬局やドラッグストアの業務は、薬剤師でなければできないもの、資格はいらないが判断を伴うもの、手順どおりに進められるものが混ざっています。このうち三つめを意識的に抜き出すのが、職務の切り出しです。

切り出しの考え方自体は、薬剤師の採用人数を減らすために事務へ業務を移す発想と同じ筋です。業務の棚卸し方法は薬剤師が採れないなら、採る人数を減らせないか。事務・非薬剤師への業務移管から考えるで詳しく扱っているので、あわせてご覧ください。

業務の例切り出しやすさ設計時の注意
店内の商品補充・前出し・陳列整理高い売場図や棚割りを紙で用意する。繁忙時間帯を避ける
清掃、備品・消耗品の補充と在庫確認高い発注の判断までやるか、報告までにするかを決める
書類の整理・ファイリング、郵便物の仕分け中程度患者情報を含む書類の取り扱い範囲を明示する
データ入力(在庫、備品、勤怠関連など)中程度入力画面と手順を固定する。確認者を決める
包装・袋詰めなどの定型作業中程度調剤業務との線引きを明確にする

調剤に関わる補助業務をどこまで任せられるかは、行政通知で示された範囲があり、店舗の体制によっても判断が分かれます。資格の要否や業務範囲の線引きは、自社の管理薬剤師と確認したうえで決めてください。迷う部分を無理に含めず、まずは判断の入らない作業から始めるほうが、現場も本人も負荷が小さくなります。

切り出すときのコツは、「一つの仕事を丸ごと渡す」ことです。補充を頼むなら、棚の確認から補充、終了報告までを一連の流れとして渡す。途中だけを切り取って渡すと、前後の人との調整が常に発生し、結果として現場の手間が増えます。

任せる範囲・手順書・指示者の三点を先に決める

採用前に決めておきたいのは次の三点です。

一つめは、任せる範囲とその線引き。「どこまでやってもらい、どこから先は声をかけてもらうか」を具体的に書き出します。たとえば備品の在庫確認なら、「残数を数えて用紙に記入するところまで。発注は社員が行う」といった粒度です。

二つめは、手順書です。口頭の説明だけで覚えてもらう前提にすると、教える人によって言い方が変わり、できていたことができなくなることがあります。写真を入れた1〜2枚の紙で十分です。棚の場所、使う道具、終わったときの報告先を書いておきます。この手順書は、パートや新人スタッフの教育にもそのまま使えることが多く、作る手間は一度きりではありません。

三つめは、指示者を一人に決めることです。複数の社員がそれぞれ別の指示を出す状態は、誰にとっても働きにくい環境になります。店舗に一人、その日の業務を伝える担当者を決め、不在時の代理も事前に決めておきます。指導役に業務時間と評価上の位置づけをどう与えるかは、教える側が育っていない。新人指導役をどうつくるかでも整理しています。

採用ルートと、実習から入る進め方

募集の出し方は、一般の求人媒体に出すより、専門の窓口を経由するほうが現実的です。それぞれ役割が違います。

ルート役割企業側の動き方
ハローワークの専門窓口求人の受付、求職者の紹介、各種支援制度の案内管轄の窓口に相談し、職務内容を持ち込んで求人票を作る
就労移行支援事業所など支援機関訓練中・訓練修了者の紹介、就労後の定着支援地域の事業所を調べて見学を依頼し、職務内容を見てもらう
地域障害者職業センター等職務分析や受け入れ体制づくりの助言、ジョブコーチ支援切り出した業務が適切か相談する
特別支援学校在学生の職場実習、卒業予定者の就職進路指導の担当者に連絡し、実習受け入れから始める

いずれのルートでも、最初に実習(職場体験)から入る進め方が一般的です。実際の店舗で数日から数週間、切り出した業務をやってもらい、本人・企業・支援機関の三者で「この仕事なら続けられそうか」を確認します。雇用を前提としない実習、トライアル的な雇用など複数の形があり、使える制度や助成の要件は年度や地域で変わるため、ハローワークの窓口で最新の内容を確認してください。

実習を受け入れると、切り出したつもりの業務が実は曖昧だった、手順書の言葉が伝わりにくかった、といったことが見えます。ここで修正できるのが、実習から入る最大の利点です。

学校を経由する採用という点では、高卒採用と似た面があります。学校側の年間スケジュールに合わせて動く必要があり、企業の都合だけで時期を決められません。学校経由の採用に慣れていない場合は、高卒採用の「一人一社制」とは。初めての企業がつまずくルールを整理するで、学校とやり取りする採用の基本的な感覚をつかんでおくと動きやすくなります。

入社後の立ち上がりで見るところ

入社したら、最初の数ヶ月は到達基準を細かく置きます。「一人で補充が完了できる」「報告を自分から出せる」といった行動レベルで区切り、できた段階で次を渡す。この進め方は新人薬剤師や未経験スタッフの受け入れと変わりません。考え方の土台は入社3ヶ月で辞められる薬局。最初の90日にやることを決めておくと共通しています。

支援機関を経由して採用した場合、入社後も担当者が定期的に関わってくれることがあります。本人に直接聞きにくいことを相談できる相手がいる状態は、現場の負担を下げます。契約や支援の範囲は機関によって違うため、採用を決める前に「入社後どこまで関わってもらえるか」を確認しておくことをおすすめします。

障害者雇用は、率を満たすための例外的な採用ではなく、店舗業務の棚卸しと手順の整備を伴う通常の採用設計です。結果として、作った手順書やはっきりした指示系統は、パート・新卒・中途の受け入れにも効いてきます。

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