薬剤師が採れるまでの間、店舗をどう回すか。欠員時の優先順位
薬剤師が1名抜けると決まった瞬間から、採用担当の仕事は二本立てになります。ひとつは後任を採ること。もうひとつは、後任が決まって入社してくるまでの数ヶ月、店舗を回し続けることです。後者は求人票にも面接にも表れないため、採用の進捗報告には出てきません。けれども現場から見れば、こちらのほうが切実です。
そしてこの「凌ぎ方」の選び方が、次の欠員を呼ぶかどうかを分けます。残った薬剤師に負荷を寄せて時間を稼ぐと、目先は回りますが、その人が疲弊して辞めると欠員が2名になります。ここでは、欠員が出てから採用が決まるまでの期間を、売上への影響と管理薬剤師の負荷という二軸で整理します。
まず「何を守るか」を先に決める
欠員が出たとき、現場は自然と「今まで通り全部やる」方向に動きます。誰かが早く出て、誰かが遅くまで残り、休みを削って埋める。この判断は現場の善意から出るものですが、経営としては何も決めていない状態と同じです。
先に決めるべきは、この数ヶ月で守るものと、一時的に落とすものの線引きです。判断材料はおおむね三つあります。
- 処方元との関係。門前の医療機関の診療時間に応需できないと、関係そのものに影響が出ることがあります
- 患者の継続性。在宅や施設対応は、一度手放すと戻すのが難しいことが多い領域です
- 法令・体制上の要件。管理薬剤師の常駐や無資格者への業務範囲は、忙しさを理由に緩められません
三つ目は交渉の余地がないので、実際に調整できるのは一つ目と二つ目です。「全部守る」を選んだ時点で、負荷は自動的に残った薬剤師に流れます。
打ち手を、売上影響と管理薬剤師の負荷で並べる
欠員時に取りうる手を、影響の向きで並べると次のようになります。数値は店舗の規模や商圏で変わるため、あくまで方向感として見てください。
| 打ち手 | 売上への影響 | 管理薬剤師の負荷 | 立ち上がりの速さ |
|---|---|---|---|
| 応需時間(開局時間)の短縮 | 下がる | 下がる | 早い(要届出・掲示・周知) |
| 在宅・施設訪問の件数を一時調整 | 下がる | 下がる | 早い(関係先との相談が必要) |
| 派遣薬剤師の活用 | 維持しやすい | やや下がる(教育負荷は増える) | 比較的早い |
| パート薬剤師の追加募集 | 維持しやすい | 下がる | 中程度(採用に時間がかかる) |
| 近隣店舗からの応援シフト | 維持しやすい | 下がるが応援元が上がる | 早い |
| 残ったメンバーの時間外で吸収 | 維持できる | 大きく上がる | 即日 |
最後の行だけが、売上を守りながら即日で効きます。だからこそ最初に選ばれ、そして最も危険です。ここを主力の手にせず、他の行と組み合わせるのが現実的な設計になります。
応需時間の短縮と在宅の調整は「先に相談する」
営業時間を短くする、在宅の新規受け入れを一時止める。どちらも売上が落ちるため躊躇しがちですが、黙って対応が遅れるより、事前に処方元やケアマネジャー、施設側へ事情を伝えるほうが関係は保ちやすくなります。「〇月まで薬剤師の補充を進めており、その間は新規のご依頼をお待ちいただきたい」と期限つきで伝えられれば、相手も計画を立てられます。
なお開局時間の変更には届出や掲示、患者への周知が伴います。手続きの内容は自治体や年度で異なるため、変更を決める前に最新の要領を確認してください。
派遣とパートは役割が違う
派遣は立ち上がりが早い一方で、業務を覚えてもらう間の指導は現場が負います。短期で入れ替わると、教える作業が繰り返し発生します。時間を買う手段として割り切り、「いつまで」を決めて使うのが扱いやすい方法です。
パートの追加募集は、常勤1名を複数名で分担する発想です。時間の刻み方次第で応募のしやすさが変わるため、条件文の作り方はパート薬剤師が集まる募集条件のつくり方にまとめています。あわせて、復職を考えている層に届く募集の書き方はブランクのある薬剤師を採用するを参照してください。欠員対応でありながら、そのまま採用の一手になります。
一時しのぎが連鎖を起こす仕組み
欠員のカバーが長引くと、残った薬剤師にはいくつかの変化が起きます。休みが取りにくくなる。時間外が増える。相談相手がいないまま判断する場面が増える。監査や在宅の準備に割く時間が削られ、ミスへの不安が募る。
問題は、この状態が「一時的だから」という説明で始まり、終わりが示されないまま続くことです。本人からすれば、いつまで続くのか分からない負荷は、恒久的な労働条件の変更と変わりません。そして薬剤師は資格による転職力が高いため、辞める判断のハードルが他職種より低い傾向があります。
だから、欠員期間の運用には終期の宣言が要ります。「〇月末までは応援シフトで回す。その時点で採用が決まっていなければ、応需時間を見直す」と伝えるだけで、受け止め方は変わります。管理薬剤師本人が辞意を固める前に手を打つ考え方は管理薬剤師の後任を、辞めると言われる前に用意するで扱っています。
判断期限を先に置く
欠員が出た日を起点に、いつ何が決まっていなければ次の手に移るかを決めておきます。以下は目安の置き方の例です。実際の日数は商圏や募集職種によって変わります。
| 時点 | 確認すること | 決まっていなければ |
|---|---|---|
| 2週間後 | 求人の出稿完了、紹介会社への依頼完了、応募の有無 | 求人原稿と条件を見直す |
| 1ヶ月後 | 面接設定の実績、選考の詰まり | 派遣・パートの併用を判断する |
| 2ヶ月後 | 内定または入社日の見込み | 応需時間・在宅件数の調整を実行する |
| 3ヶ月後 | 入社日の確定 | 恒久的な体制変更として社内に説明する |
期限を置く目的は、現場に「あと少し」を言い続けないことです。応募が来ない段階で条件を触らずに待つと、そのまま2ヶ月が過ぎます。原稿で動かせる範囲は意外に広いので、まずは薬剤師の求人票に応募が来ない。原稿を書き直す順番を参考に、出稿から2週間で一度見直してください。
紹介会社への依頼も同時に走らせて構いません。紹介は席を早く埋めるチャネルとして機能します。ただし紹介経由でも、面談日程が遅い・条件の説明が揃っていないといった企業側の詰まりがあると決まりません。
欠員対応の記録を、次の採用計画に残す
その場を凌いだ経験は、記録しないと消えます。誰が何時間カバーしたか、応援でどの店舗の負荷が上がったか、派遣にいくらかかったか。これらを残しておくと、次に人員配置を考えるときの根拠になります。欠員が続くコストを金額に置き換える考え方は薬剤師1人を採るのにいくらかけていいか。採用単価の考え方にまとめました。
理想は、欠員が出てから動き始めない体制です。とはいえ、その体制をつくるにも人が要るので、まずは今回の欠員を凌ぎながら、常時1名分の余力をどう持つかを並行して検討することになります。
欠員期間の凌ぎ方と、その後の採用計画は本来ひとつづきの設計です。Talencoでは、目先の欠員対応の優先順位づけから、中途・新卒それぞれの採用スケジュール設計、入社後の定着までを伴走してご一緒しています。実務は自社で進めたい場合の伴走型と、実務まで任せたい場合の一貫対応の2プランをご用意しています(支援プラン)。
現状の欠員状況と採用の進み方をうかがったうえで、次にどこから手をつけるかを整理します。無料相談(約30分〜・オンライン)で採用設計をご一緒しますので、お気軽にお申し込みください。