紹介予定派遣で薬剤師を採るという選択肢
薬剤師の採用で、履歴書と1〜2回の面接だけで「この人をうちの店舗に迎えて大丈夫か」を判断するのは難しいものです。資格があることは確認できても、監査のスピード、患者さんへの話し方、既存スタッフとの相性までは面接の場では見えません。特に管理薬剤師の候補や、少人数の店舗に入ってもらう人の場合、判断を外したときの影響が大きくなります。
紹介予定派遣は、こうした「会ってみないと分からない」部分に対して、一定期間いっしょに働いてから直接雇用を決める、という選択肢です。通常の派遣とも人材紹介とも違う位置づけなので、何を買っている仕組みなのかを整理したうえで、自社の採用計画のどこに置くかを決めると判断しやすくなります。
紹介予定派遣は「見極めの期間」を買う仕組み
紹介予定派遣は、労働者派遣のうち、派遣期間の終了後に派遣先での直接雇用に移ることを前提として行われるものを指します。一定期間は派遣スタッフとして働いてもらい、その後に本人と会社の双方が合意すれば、直接雇用に切り替わります。
通常の派遣では、派遣先が特定の人を指名したり事前に面接したりすることは原則として認められていません。一方、紹介予定派遣では、直接雇用を前提とすることから、事前の面接や履歴書の確認が例外的に可能とされています。派遣期間の上限など細かい条件は制度改正や運用で変わりうるため、実際に進める前に派遣元(派遣会社)に最新の取り扱いを確認してください。
ここで買っているのは、人手そのものよりも「判断を先送りできる期間」です。逆に言えば、その期間に何を見るかを決めていなければ、ただ数ヶ月が過ぎて、面接だけで決めたときと同じ判断をすることになります。
通常の派遣・人材紹介との違い
3つの手段は、目的も費用の発生の仕方も違います。
| 通常の派遣 | 紹介予定派遣 | 人材紹介 | |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 一時的な欠員の穴埋め | 直接雇用を前提とした見極め | 直接雇用者の採用 |
| 雇用主 | 派遣元 | 派遣期間中は派遣元、移行後は自社 | 最初から自社 |
| 事前の面接 | 原則不可 | 可とされている | 可 |
| 費用の発生 | 稼働時間に応じた派遣料金 | 派遣料金+移行時の紹介手数料など | 入社時の紹介手数料 |
| 向く場面 | 産休代替、出店直後 | 相性が読みにくい採用 | 要件が明確な欠員補充 |
人材紹介は、要件がはっきりしていて早く席を埋めたいときに有効なチャネルです。紹介予定派遣はその代わりというより、「会ってすぐには決めきれない」ケースに使う別の手段と考えたほうが整理しやすくなります。紹介経由の採用がうまく決まらない原因が企業側の設計にある場合もあるので、そちらは紹介会社から候補者は来るのに決まらない。原因は企業側にありますもあわせてご覧ください。
なお、すでに派遣薬剤師に入ってもらっていて、そのまま常態化している場合の整理は派遣薬剤師をいつまで使うか。直接雇用への切り替えを設計するで扱っています。
向く場面と、向かない場面
紹介予定派遣が効きやすいのは、次のような場面です。
管理薬剤師の候補を採るとき。 法令上の責務と店舗運営を任せる相手なので、調剤スキルだけでなく、スタッフへの指示の出し方や判断の速さを見たい。面接では測りにくい領域が多く、数ヶ月いっしょに働く価値が出やすい場面です。
少人数店舗で、相性が読めないとき。 常勤2〜3名の店舗では、1人の人柄が職場の雰囲気をほぼ決めます。既存スタッフとの関係を見てから決められる意味は小さくありません。
ブランク明けの薬剤師を迎えるとき。 本人も「どこまでできるか分からない」という不安を抱えています。いきなり正社員で入るより、期間を区切って働きながら様子を見るほうが応募しやすいことがあります。受け入れ側の準備はブランクのある薬剤師を採用する。受け入れ側が決めておくことに整理しています。
一方、向かないのは次のような場合です。
- 今すぐ常勤1名分の穴を埋めないと営業が回らない(紹介予定派遣でも募集から就業開始までは時間がかかります)
- 在職中の転職希望者が主なターゲット(一度派遣に移る形を取るため、現職を辞める前提になり、敬遠されやすい)
- 新卒の薬学生(学事と免許交付のスケジュールが前提になるため、別の設計になります)
- 「とりあえず様子見で」という目的で、直接雇用の意思が固まっていない場合
最後の点は特に注意が必要です。紹介予定派遣は直接雇用を前提とする仕組みなので、採る気がないまま使う運用には向きません。
派遣期間中に、何を見るかを先に決める
見極め期間を買っても、見る項目が決まっていなければ「なんとなく良さそう」で終わります。就業開始の前に、評価する項目と、誰がいつ確認するかを紙にしておきます。
| 時期 | 確認する内容 | 確認する人 |
|---|---|---|
| 就業1〜2週目 | 調剤・監査の基本動作、疑義照会の判断、記録の書き方 | 管理薬剤師 |
| 1ヶ月目 | 患者応対、処方元とのやりとり、既存スタッフとの関係 | 店長・管理薬剤師 |
| 2〜3ヶ月目 | 在宅・一包化など店舗固有の業務への対応、繁忙時間帯の処理量 | 管理薬剤師 |
| 移行判断前 | 本人の希望(勤務日数・配属・将来任せたい役割への意向) | 経営者・採用責任者 |
評価項目は、できるだけ「〜ができているか」という行動で書きます。「協調性がある」では人によって判断が割れます。「他のスタッフに自分から確認を取っているか」のように書くと、複数人で見ても結論が揃いやすくなります。
同じ考え方は試用期間にも使えます。到達基準を事前に文書化しておく方法は試用期間を薬剤師採用でどう使うか。期間と評価の決め方で詳しく扱っています。紹介予定派遣から直接雇用に移った後、さらに試用期間を置くかどうかも、あらかじめ考えておきたい点です。
直接雇用に移るときの条件提示は、終盤では遅い
見落とされやすいのが、条件提示のタイミングです。派遣期間が終わる直前になって初めて給与や勤務条件を示すと、「思っていたより低い」となったときに双方とも打つ手がなくなります。働きぶりを見てきた相手なので、ここで条件が合わずに流れると損失が大きくなります。
実務上は、次の順で進めると行き違いが減ります。
- 就業開始前に、直接雇用に移った場合の雇用形態・給与のレンジ・勤務地の考え方を、派遣元を通じて本人に伝えておく
- 派遣期間の中盤で、本人の意向と会社側の評価をそれぞれ確認する(この時点で懸念があれば共有する)
- 期間終了の1〜1.5ヶ月前を目安に、具体的な条件を提示する
- 書面での労働条件の明示と承諾の手続きを、期間終了までに済ませる
派遣期間中の働きぶりを見て、当初示したレンジの上下どちらに寄せるかを決める、という運用にしておくと、1の段階で約束しすぎずに済みます。条件提示そのものの組み立ては薬剤師への条件提示で失敗しない。オファー面談で決めておくことを参照してください。
費用と契約の枠組みは、派遣元への確認が前提
紹介予定派遣の費用は、派遣期間中の派遣料金と、直接雇用に移行する際の手数料という二段構えになっているのが一般的です。ただし、手数料の算定方法、派遣期間の長さによる扱い、移行しなかった場合の精算、早期退職時の取り扱いは、派遣元や契約内容によって異なります。
契約前に確認しておきたい項目を挙げます。
- 派遣期間の上限と、途中で直接雇用に移行する場合の扱い
- 移行時の手数料の算定基礎(年収のどの範囲を含むか)
- 本人または会社が移行しないと判断した場合の手続きと費用
- 移行後、早期に退職した場合の返金・返還の規定
- 派遣期間中の業務範囲の制限(管理薬剤師として届け出られるかは特に要確認)
最後の点は薬局特有の論点です。派遣という雇用形態で管理薬剤師の業務をどこまで担えるかは、個別の事情で判断が変わります。管理薬剤師候補として迎える場合は、派遣期間中に何を任せられるのかを、派遣元と自社の双方で事前に詰めておいてください。後任の準備全体の考え方は管理薬剤師の後任を、辞めると言われる前に用意するに整理しています。
まとめ
紹介予定派遣は、採用できる人数を増やす手段ではなく、判断の精度を上げる手段です。使うなら、見極める項目・確認する人・条件を出す時期を、就業が始まる前に決めておく。それをやらないまま期間だけ過ぎると、費用をかけて面接と同じ結論に戻ることになります。
自社の採用計画の中で、紹介予定派遣をどのポジションに使い、紹介・自社応募・派遣をどう組み合わせるか。チャネルの配分から選考設計まで含めて整理したい場合は、支援プランをご覧ください。無料相談(約30分〜・オンライン)で、現在の採用状況をうかがいながら設計をご一緒します。