薬学生向けインターンシップをどう設計するか。1日で終わらせない組み立て
学校から声がかかって、あるいは他社がやっていると聞いて、薬学生向けのインターンシップを一度やってみた。店舗を1日見てもらい、最後に社員が質問に答えて解散。学生からは「勉強になりました」と言われたけれど、その後エントリーにはつながらなかった——中小の薬局・ドラッグストアで、こういう終わり方をした話は珍しくありません。
原因は多くの場合、内容の質ではなく組み立て方にあります。1日の見学は「会社を知る機会」としては成立しますが、学生の進路選択を動かすところまでは届きにくい。ここでは、人数も専任担当もいない前提で、インターンシップを何のためにやるか、どの内容を選ぶか、どう次の接点につなげるかを順に整理します。
まず、実務実習・単位とは別物だと切り分ける
薬学部6年制には、大学のカリキュラムとして病院・薬局での実務実習があります。これは教育課程の一部で、大学と実習施設の取り決めのもとに行われるものです。一方、企業が独自に企画するインターンシップは、学生が自分の意思で参加する任意のプログラムです。目的も期間も、参加してくる学年も違います。
同じ「薬局で学生を受け入れる」行為なので混ざりやすいのですが、実務実習は教育を主目的に置くべきもので、採用の場として運用するものではありません。実習受け入れが結果的に採用ブランディングになる仕組みは薬局の実務実習受け入れは、新卒採用にどうつながるかで整理しているので、そちらと切り分けて考えてください。
なお、企業のインターンシップについては、国が主導する形で「学生のキャリア形成支援に関する取組」としての類型整理が進み、採用活動への情報活用が認められる範囲にも要件が設けられています。要件や名称の扱いは見直されることがあるため、実施前に最新の政府方針・要領を確認してください。ここでは要件の細部には踏み込まず、設計の考え方に絞ります。
内容の選択肢と、学生に残る印象の違い
中小が実施する場合、企画に凝る必要はありません。むしろ「自社の日常のどこを見せるか」の選択がそのまま内容になります。代表的な型と、学生側に残りやすい印象を整理します。
| 型 | 内容の中心 | 学生に残りやすい印象 | 受け入れ負荷 |
|---|---|---|---|
| 店舗見学型 | 調剤室・待合・OTC売場を見て、社員の一日を追う | 「雰囲気は分かった」。他社と差がつきにくい | 低 |
| 課題体験型 | 疑義照会の事例検討、服薬指導のロールプレイなど | 「薬剤師の判断」を体験でき、仕事の解像度が上がる | 中 |
| 在宅同行型 | 在宅訪問や施設訪問に同行(患者・施設の同意が前提) | 「教科書で見た在宅を実際に見た」。印象が強く残りやすい | 高 |
| 一部門集中型 | 在宅、無菌調製、健康サポート、事務・本部業務などに絞る | 自社の強みが伝わる。関心が合う学生と深く話せる | 中 |
在宅同行型は学生の記憶に残りやすい反面、患者・入居施設の同意、同行人数、感染対策など事前の調整が多くなります。無理に高負荷の型から始める必要はありません。店舗見学型を土台に、課題体験を1コマだけ足す形からでも組み立てられます。
大事なのは、型を選ぶ前に「自社のどこを見てほしいか」を決めることです。配属の確約、業務範囲の広さ、意思決定の近さといった中小の持ち味は、パンフレットより現場で伝わります。この言語化は中小薬局が大手チェーンとの採用競争で勝てる場所はどこかを先に読んでから企画に入ると迷いにくくなります。
1日で終わらせない、とはどういうことか
「長期間拘束する」という意味ではありません。薬学生は実務実習、卒業試験、国家試験と学事が詰まっており、動ける時期が限られます(学年別の動ける時期は薬学生の新卒採用スケジュール。6年制の学事と採用活動の重ね方にまとめています)。
現実的なのは、短い接点を段階的に置き、そのつなぎ方を事前に決めておくやり方です。
| 段階 | 形式の例 | ねらい | 次への渡し方 |
|---|---|---|---|
| 1回目 | オンライン30〜60分の職種説明・座談会 | 母集団づくり。学年を問わず参加しやすい | 対面回の日程を複数提示する |
| 2回目 | 半日の店舗見学+課題体験 | 仕事の解像度を上げる | 感想を聞き、関心のあった分野を記録 |
| 3回目 | 関心分野に合わせた同行・部門体験 | 志望度の高い学生と深く関わる | 説明会・選考の案内、社員との個別接点 |
3段階すべてを全員に用意する必要はありません。1回目を広く、後段を絞る形にすれば、少人数の体制でも回ります。ポイントは、その場で次の案内を渡すことです。「興味があれば連絡してください」で解散すると、学生側から動く理由がなくなります。参加者ごとに、誰がいつ何を送るかを決めておくと、間が空いても関係が切れにくくなります。
学内での告知経路をどう確保するか
自社サイトに載せるだけでは、まだ社名を知らない学生には届きません。学内の告知経路は主に次のあたりです。
- キャリアセンター・就職課への案内送付(掲示、学内システム、メール配信)
- 学内合同説明会・業界研究会への出展枠
- 研究室・ゼミの教員経由での紹介
- 実務実習の受け入れを通じた大学窓口とのやりとり
- 学生が使う就職情報サイトのインターン枠
いずれも、募集の直前に連絡しても枠が埋まっていることが多いため、年間の連絡サイクルとして組んでおく必要があります。まだ大学とのつながりがない場合の最初の一歩は薬科大学・専門学校との接点がない会社が、最初にやることに手順を書いています。
案内文には、対象学年、日程の選択肢、当日の内容、服装、交通費や報酬の扱い、個人情報の取り扱いを明記してください。学校を経由する案内は、書いていないことを学生が問い合わせにくいため、条件の曖昧さがそのまま参加辞退につながります。
選考と直結させる場合の説明の仕方
インターンシップで得た学生の情報を採用選考に使う場合、あらかじめその旨を学生に伝えることが前提になります。伝えずに実施し、後から選考の一部として扱うと、学生や大学からの信頼を損ないます。
案内文と当日の冒頭で、少なくとも次の点は言葉にしておくと誤解が減ります。
- このプログラムが選考に関係するのか、しないのか
- 参加が選考で有利・不利になるのか
- 提出物や当日の様子を採用判断に使うことがあるか
- 参加しなくても応募できるか
選考に関係させない設計もひとつの選択です。関係させないと決めたなら、その旨をはっきり書いたほうが参加のハードルは下がります。前述のとおり、採用活動への情報活用が認められる条件は制度の見直し対象になりうるため、実施年度ごとに最新の要領を確認してください。
受け入れ側で先に決めておくこと
企画が決まっても、当日の担当が決まっていないと現場任せになり、店舗によって体験の質が変わります。最低限、次の4点は事前に決めておくと安定します。
- 受け入れ店舗と、当日の説明担当者(店長か管理薬剤師か、代理は誰か)
- 学生が見てよい範囲と、見せない情報(処方内容、患者情報の扱い)
- タイムテーブルと、社員が話す内容の骨子
- 終了後の記録フォーマット(誰が来て、何に関心を示したか)
4番目を残しておくと、翌年以降の企画修正と、説明会・選考への案内が楽になります。参加者が説明会に流れない場合は、インターンの内容よりも案内の仕方に原因があることも多く、そのときは会社説明会の参加者が集まらないときに見直す3つの設計の観点と併せて見直してみてください。
一度きりの企画にしないために
インターンシップは、単発のイベントとして見ると費用対効果が読みにくい取り組みです。年間の接点設計のなかに置き、学内告知、説明会、選考、内定者フォローまで一本の線でつないだときに、はじめて採用の数字に効いてきます。
どの型から始めるか、何段階に分けるか、学校への案内をいつ出すか。自社の店舗数と人員に合わせた設計は、支援プランのなかでご一緒しています。まずは無料相談(約30分〜・オンライン)で、現状の接点と来年度のスケジュールを見ながら採用設計をご一緒させてください。